刑法 予備試験令和5年第5問(司法試験令和5年第12問)肢オを考えてみよう

【前回のあらすじ】

刑法予備試験令和5年第5問(司法試験令和5年第12問)肢エを検討しました。
次は,肢オです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

まあまあです。

スク東先生:そうですね。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

刑法予備試験令和5年第5問(司法試験令和5年第12問)肢オです。

「オ.緊急避難におけるやむを得ずにした行為とは、正当防衛におけるのと同様に、手段として必要最小限度のものであること、すなわち相当性を有するものであれば足りる。」

正解はどうでしょう。

誤っています。

スク東先生:なんででしょう。

えっと,判例があるようです。(最大判昭24.5.18)。緊急避難の場合,相当性だけではなく補充性も要求されます。

スク東先生:なるほど,結論はあってますね。ちなみに補充性っていうのはなんですかねー。

はい,当該,その危難を避けるために、当該避難行為をする以外にはほかに方法がなかった場合です。

スク東先生:いいですね。しっかり,言葉の意味も押さえております。判例があるということなんですが,そもそもどのあたりが,問題の出発点でしょう?

えっと,条文です。

スク東先生:そうですね。改めて,条文を確認してみましょう。

刑法36条(正当防衛)
1.急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2.(略)

刑法37条(緊急避難)
1.自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。 ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を軽減し、又は免除することができる。
2.(略)

なるほど,確かによく見ると,刑法36条,刑法37条,両方に,「やむを得ずにした行為」がありますね。同じ言葉なのに,正当防衛と緊急避難で意味が違うというのが答えになります。

スク東先生:はい,そこをしっかりと説明すれば,この問題は解決です。どうして違うのでしょう。

はい,結局,正当防衛の場合,正対不正,緊急避難の場合,正対正です。状況が違うからだと思います。

スク東先生:そうですね。最低限のポイント押さえております。ただ,もう少し確認したいです。状況が違うと,どうして,「やむを得ずにした行為」の意味が変わってくるのでしょうか?

うーん。

スク東先生:なるほど,迷ってしまいましたか。問いの内容は,正当防衛と緊急避難の条文の解釈ですよね。何を足掛かりに考えればいいのでしょう。

なるほど,法的性質ですね。確か,正当防衛と緊急避難も違法性阻却事由です。

スク東先生:いいですね。そこまでわかれば,大体見えているじゃないですか。法的性質がわかれば解釈の方向性分かりますよね。

はい,違法性の実質は,社会的相当性を逸脱した法益侵害および危険性です。なるほど,正対不正の場面(正当防衛)における社会的相当な行為と正対正の場面(緊急避難)における社会的相当な行為は違ってしかるべきですね。

スク東先生:はい,いいでしょう。こんな感じで法的性質を確認した上で,しっかり解釈されるといいと思います。これで無事検討ができました。ということで,本日は終わりにします。ありがとうございました。この続きは,また来週お楽しみに。



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