予備試験29年6問(民法)肢エを検討する 第6回 抵当権設定者の求償権(最判平2.12.18)

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年6問(民法)肢エを検討することになりました。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,予備試験29年第6問(民法)肢「エ.被担保債権の弁済期が到来した場合であっても,Cは,Aに対し,本件抵当権が実行される前に,あらかじめ求償権を行使することはできない。」を検討していきましょう。
なお,事実関係は,AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合であるとする。

この肢は,正しいですか,間違ってますか。

東花子さん

正しいですね。

あってますね。どうして,そのように考えるのでしょうか。

考えている

判例があります。(最判平2.12.18)

そうですね。結論はあってますが,意味を理解しないとダメですね。

東花子さん

まあ,そうですね。

では,ポイントを確認してきましょう。抵当権の求償権に関する条文を載せておきます。

(留置権等の規定の準用)
民法第372条
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。

(物上保証人の求償権)
民法第351条
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。

どうでしょうか。

東花子さん

はい,372条は,351条を準用しているので,抵当権の実行によって抵当不動産の所有権を失ったときは,保証債務の規定に従い,債務者に対して求償権を有することになります。

そうですね。したがって,本件Cは,まだ抵当権実行により所有権を失っていません。なので,債務者Bに対し求償権を行使できないですね。

東花子さん

はい,なので求償権を行使できないとする本肢は,正しいとなります。

形式的には,その通りです。ただ,それだとCは,Aに抵当権を実行されて所有権を失ってしまいます。
ですので,Cを保護するべく,事前にBに求償を認めてAに弁済を図る道を設けても良いのではありませんか。

考えている

なるほど,確かに,そうです。

はい,実際に,保証人の場合,460条で事前の求償権が認められてます。

(委託を受けた保証人の事前の求償権)
民法第460条
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
一.主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二.債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三.債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。

東花子さん

そうか,なので,抵当権設定者(物上保証人)にも460条で保護できないかという議論になるのですね。

まあ,そうですね。ただ,形式的に違うので460条は,直接適用はできません。結局,460条を類推適用できるかという話になります。

東花子さん

ポイントはわかりました。そして,最後は抵当権設定者(物上保証人)と保証人は利益状況が別だから,類推の基礎はないとなるのですね。

その通りです。問題の所在と考える方向性が分かりました。では,具体的にどう利益状況が違うのでしょう。

東花子さん

うーん。抵当権設定者(物上保証人)と保証人は,かなり状況が近いようにに思えるのですが・・・。

なるほど,その点については考えてもらいたいので,今日は,ここまでにしましょう。それでは,この続きは,また明日,お楽しみに。



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カテゴリー: 平成29年, 担保物権, 民法・商法・民事訴訟法 パーマリンク

予備試験29年6問(民法)肢エを検討する 第6回 抵当権設定者の求償権(最判平2.12.18) への1件のフィードバック

  1. Ryo より:

    長々解説してますけど物上保証人が債権者に求償って普通はないですよね。

    いいね

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