民法・司法試験令和4年第6問肢ウを考えてみよう

【前回のあらすじ】

今日から,民法司法令和4年6問肢イを検討しました。
次は,肢ウです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。ようやく春が近づいてきました。

スク東先生:そうですね。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和4年6問肢ウです。

「ウ.Aがその所有する甲土地にBのために地上権を設定し,その旨の登記がされない間に甲土地にCのために抵当権を設定してその旨の登記がされた後,Bの地上権の設定の登記がされた。この場合において,Cの抵当権が実行され,Dが甲土地を買い受けてその旨の登記がされたときは,Bは,Dに対し,地上権の取得を対抗することができる。」

正解はどうでしょう。

誤っています。

スク東先生:なんででしょう。

えっと,なんとなくかなぁ

スク東先生:ふーん。

やっぱ,ダメですよね。なぜかがわからないと。

スク東先生:まあ,そうですね。大丈夫,いろいろ人物関係や,権利関係がいっぱい出てきますが,落ち着けばわかりますよ。条文は,177条を使っていきます。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

なるほど,落ち着いて問題文を読んでみると,Bは地上権を設定してますが,登記する前にCに抵当権の登記が入っています。したがって,抵当権の方が先なので,Bの地上権に対抗できますね(177条)。

スク東先生:はい,そうですね。その結果,抵当権は,地上権の負担がない所有権の交換価値を把握していることになります。

そうか,その後,Cの抵当権が実行されてDが甲土地を買受けて登記してます。Cの抵当権はBの地上権に対抗できたわけだから,Dもその内容で甲土地を買い受けてますね。

スク東先生:そうそう。結局,Dは競売で地上権の負担なしの甲土地の所有権をAから買ったことになります。

だから,BはDに対して地上権の取得を対抗できないとなりますね。

スク東先生:そういうこと,落ち着いて考えればいけますでしょ。

はい,筋道を立てて考えていくことがポイントだと思いました。

スク東先生:そうですね。出題側もその辺りが,狙いだったのだと思います。落ち着くことが大事でした。
それでは,今日も時間となりましたのでこの辺りしましょう。この続きは,また来週お楽しみに。



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民法・司法試験令和4年第6問肢イを考えてみよう

【前回のあらすじ】

今日から,民法司法令和4年6問肢アを検討しました。
次は,肢イです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。少し暖かくなってきましたね。

スク東先生:そうですね。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和4年6問肢イです。

「イ.甲土地を所有するAが死亡して子B及びCが相続し,BとCの遺産分割協議により甲土地はBの単独所有とされた。その後,Cが,甲土地につきCの単独所有とする登記をした上で,これをDに売却したときは,Bは,Dに対し,甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。」

正解はどうでしょう。

正しいですね。

スク東先生:なんででしょう。

条文(899条2 第1項)です。判例(最判昭46.1.26)もあったようです。

スク東先生:なるほど,確認しましょう。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2
1.相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2.(略)

この条文によれば,Bは,Dに対し,甲土地の単独所有権の取得を対抗するには,登記がいることになります。

スク東先生:そうですね。B単独所有ということは,相続分を超える部分をDに対して主張することになりますからね。結論はいいのですが・・・。

なるほど,今回はしっかり意味を取るということですね。

スク東先生:はい,第899条の2 が2018年改正で新設されましたが,それ以前は,遺産分割後の第三者ということで,177条で処理していました。人によってはこちらの方が馴染みがあるかもしれません。

ふーん,そうなんだ。まあ,結局,相続関係で持分以上の権利を第三者に主張するときは登記がいるということになります。どう理解すればいいのでしょう。

スク東先生:そうですね。この場合は特に遺産分割によりBは単独で権利を取得してます。法的効果は遡及効になりますが(909条),BはCの持分を自らに移転することを怠ったといえるでしょう。

確かに,Bは,遺産分割により権利を取得しているので,Cの持分を移転できますね。

スク東先生:はい,そのようなBと,Cからの持分を譲り受けたDとの法律関係になります。利益状況からすると,Cの持分に対して,BとDは競争関係と考えられますね。

なるほど,その状況を見て,177条で処理していたわけですね。

スク東先生:そうですね。自由競争(二重譲渡)の関係を,調整するのが177条ですからね。ただ,第899条の2は,Cを起点として,BとDを177条で処理する理屈がわかりにくかったので作られました。

ふーん,確かに,BとDがCを起点として対抗関係だとするには,Cに一度でも権利がないといけないですからね。遺産分割の効果は遡及効ですので,Cに権利があったという説明が難しくなります。

スク東先生:そういうことです。まあ,いろいろ難しくいってしまいましたが,要は,利益状況を考えて,シンプルになる条文が手当されたと整理すればいいと思います。

なるほど,わかりました。

スク東先生:はい,こんな感じで大丈夫だと思います。それでは,ちょうどキリがいいので,この辺りで終わりしましょう。この続きは,また来週お楽しみに。



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民法・司法試験令和4年第6問肢アを考えてみよう

今日から,民法司法令和4年6問を検討することになりました。
まずは,肢アからです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,ぼちぼちです。まだ,若干,寒いですね。

スク東先生:そうですね。3月に入りました。もう少しで暖かくなることを期待しましょう。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和4年6問肢アです。

「ア.Aがその所有する甲建物をBに売却した場合において,甲建物の保存登記が未了であったときは,Bは,自己名義の登記がなくても,所有権の取得を第三者に対抗することができる。」

正解はどうでしょう。

誤りです。

スク東先生:なんででしょう。

条文(177条)です。

スク東先生:なるほど,確認しましょう。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

177条によれば,Bは,自己名義の登記を具備しないと,甲建物の所有権の取得を第三者に対抗できません。

スク東先生:そうですね。登記が,対抗要件になります。

あれ,今日は珍しく突っ込んできませんね。

スク東先生:はい,不動産の場合,第三者(当事者及び包括承継人以外で登記の欠缺に正当な利益を有する第三者)に対して対抗するために登記が必要なことは,結構,受験生も押さえていると思いますので・・・。

はい,なんとか。不動産では,公示の原則を通して取引の安全を図っています。

スク東先生:その通り!!177条は,民法の中でもよくでる条文です。この機会にしっかり確認しておいてください。

わかりました。

スク東先生:はい,それでは,キリがいいので終わりします。今日はあっさり終わってしまいましたが,基本をこの機会にしっかり確認しておいてください。それでは,また来週お楽しみに。



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