刑法各論・法益の大枠から考える(22ー13を題材にして 第2回)

【前回のあらすじ】

刑法各論を検討してます。その際は、保護法益から考えることが重要のようです。
抽象的にいってもよくわからないので、「平成22年第13問肢4、共同親権者の1人が、他の共同親権者の監護下にある未成年の子を略取する行為については、未成年者略取罪は成立し得ない。」を例に考えることになりました。
では,はじまり,はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

まあまあですかね。

スク東先生:なるほど、暑い日がつづきますので、ほどほどがいいですかね。熱中症に気を付けて、夏を乗り切りましょう。前回のつづき、早速行きましょう。問題を載せておきますね。

例 平成22年 第13問
4、共同親権者の1人が、他の共同親権者の監護下にある未成年の子を略取する行為については、未成年者略取罪は成立し得ない。

確か、未成年者略取罪は成立しえることを確認しましたね。

考えている

そうです、そうです。判例(最決平17.12.6)があるっていったら、それだとまずいって言われました。

スク東先生:そうですね。この問題だけやるなら、最悪それでもよいのかもしれないのですが、理屈を押さえてやらないと、他のケースに対応できないという話をしてました。
それを考えてみるというのが前回の宿題だったと思うのですが、やってみましたか。

東花子さん

うーん、すいません。よくわかりませんでした。

スク東先生:なるほど、わかりました。では、一緒に考えていきますか。ちなみに、この問題の悩ましいポイントはわかりますか?

考えている

えっと、未成年を略取したものが「共同親権者の1人」ということでしょうか。

スク東先生:おおいいですね。なんで、わかったんですか。

東花子さん

いやぁ、よく先生が問題文をよく読めっていうから。

スク東先生:そうですね。少ないながらも、わざわざ事実が上がっているわけです。ですので、そこに何かしらの意味を考えたいですね。それで、今回、この事実にどういった意味があるのでしょう?

東花子さん

えっ、なんだろう?

スク東先生:いやぁ、こういうときには難しく考えない方がいいですね。っていうか難しいとできませんよ。結局、共同親権者ということは、一連の事情って全部、家庭内の事情じゃないですか。

東花子さん

あっ、確かに、言われ見ればそうです。

スク東先生:でしょ。それを「未成年者略取罪」ということで、犯罪を成立させるのは行き過ぎなんじゃないのっていう疑問ですよ。

考えている

なるほど、刑罰は人権侵害の最たるものですからね。謙抑主義から、刑罰に値する場合に犯罪を成立させるべきです。

スク東先生:そうなんです。その辺りが、本問で考えたいところですね。しかし、未成年者略取罪は成立し得るというのが答えなんです。この点を、どう考えていきましょう?

花子さん

うーん、家族内でも、円満な家庭ばかりではないですね。一律に犯罪不成立というのも、不具合があるでしょうか。

スク東先生:いいですね。家庭内暴力なども近年、問題になっていますからね。そうすると、一切犯罪が成立しえないとすると、社会的秩序が守れないケースがあるということなんでしょう。

花子さん

そうか、判例は、そういう事情も踏まえて判断をしているわけですね。

スク東先生:そう分析すると、結論も入ってきます。判例も、実際の事情を想定して、社会通念にしたがって判断をしているわけです。だから、勉強する際にも、この辺りの具体的な利益状況を考えて押さえたいですね。

考えている

なるほど、イメージが大事なんですね。ただ、これを法的に説明することも重要な気がするのですが・・・。

スク東先生:いいですね。もちろん日本は、法治国家ですから、道理として犯罪を成立させるべきだから成立させるというわけにはいかんわけです。そこを理屈つけるかは、大事です。

東花子さん

ふーん、これをどう考えるかが、今日の宿題ってわけか。

スク東先生:おおいいですね。そういうことです。いろいろ話してしまいましたからね。しっかり、考えてもらいましょう。それでは、ちょうど時間となりましたので、この辺りで終わりします。

では、また来週お楽しみに!!

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刑法各論・法益の大枠から考える(22ー13を題材にして 第1回)

【前回のあらすじ】

前回までは手薄な罪数論を扱いました。
本日からは,刑法各論を少し検討していくようですよ。では,はじまり,はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

はい、バッチリです。

スク東先生:そうですか,それは何よりです。早速ですが,今日は,刑法各論のポイントを少しやっていきましょう。各論を考える上で,押さえたいポイントはわかりますか。

考えている

はい,保護法益だと思います。

スク東先生:いいですね。各論の構成要件は,保護法益を守るために存在します。したがって,目的を達成するために構成要件を解釈することが求められますからね。

東花子さん

そうですね。やみくもに,判例の定義を押さえられませんからね。

スク東先生:はい,ぜひ,その考え方を大事にしてくださいね。あと,もう一つ「保護法益」に絡んで押さえたいポイントがあるんですよ。なんだか,わかりますか。

東花子さん

ええっと,なんだろう?よく分かりません。

スク東先生:そうですね。ちょっと抽象的で漠然としてしまいました。そうしたら,問題を通して確認してきましょう。問題を載せますね。

例 平成22年 第13問
4、共同親権者の1人が、他の共同親権者の監護下にある未成年の子を略取する行為については、未成年者略取罪は成立し得ない。

この平成22年第13問肢4を通して,ポイントを確認していきたいと思います。
ちなみに正解は,わかりますか。

考えている

おそらく,未成年者略取罪は成立し得るので,間違っているんじゃないからなぁー。

スク東先生:なるほど,正解ですが,なんでかわかりますか?

東花子さん

えっと,確か判例(最決平17.12.6)にあったようなー。

スク東先生:・・・,ふーん。結論は,あっているんですが,なんだかなぁ。

考えている

なるほど,暗記っぽいっていうわけですね。

スク東先生:まあ,そうですね。そこを,保護法益から理論的に説明したいわけです。

東花子さん

そうですか,問題点はわかりました。ちょっと,考えたいので時間もらっていいですか。

スク東先生:わかりました。そうした方が,良さそうですね。この機会に整理しましょう。ヒントは,先ほどの保護法益がポイントになります。この辺りから考えてみましょう。それでは,今日はこれで終わりにします。

では、また来週お楽しみに!!

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刑法総論・不可罰的事後行為を考えよう(予備24ー8肢エを題材にして 第5回)

前回のあらすじ

予備24−8エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】を検討しました。結論をいいますと、売却した行為は、窃盗とは牽連犯となりません。不可罰的事後行為について、理論構成を考えることになりました。
窃盗犯が状態犯ということが、ポイントのようですが、確認していきましょう。

では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

暑いですね。

スク東先生:そうですか。まあ、暑いと体力が奪われがちですが、頑張っていきましょう。早速ですが、問題の続き検討しましょう。

予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

売却した行為は、不可罰的事後行為となりますが、窃盗罪が状態犯であることがポイントでした。

考えている

そうですね。確認しました。たしかに状態犯は、実行行為は即終了するけど、法益侵害は継続する犯罪類型でしたね。

スク東先生:その通り。そこが分かれば、不可罰的事後行為が説明できるというところで、終わりました。その後、整理できましたか。

東花子さん

はい、一応。

スク東先生:なるほど、聞かせてもらえますか。

考えている

窃盗罪の保護法益は、占有です。窃盗後は、占有侵害が継続しているわけだから、売却による新たな法益侵害はないと思うのですが・・・。

スク東先生:うーん、方向性は、あっているんですが、まだ、何か足りない気がしますね。

東花子さん

えっ、なんだろう?

スク東先生:そうですか。勝手に車の売却で、侵害しているのは、所有権じゃないですかね。占有権でなくて・・・。

考えている

たしかに、言われてみればそうですね。

スク東先生:そうしたら、窃盗の占有権の侵害で、所有権の侵害を評価しているって、説明おかしいんじゃない。

東花子さん

そっか、気づかなかったなぁ。

スク東先生:そうなんですよ。ここをしっかり整理したいわけです。結論は、知っているかもしれないけど、なんとなくにしない方がいいですね。どう考えましょう?

考えている

えっと、えっと。よくわかってません。

スク東先生:まあ、そうなりますね。じゃあ、質問ですが、窃盗罪の保護法益は、占有権といったけど、どうして、そう考えるでしたっけ。

東花子さん

あっ、確か本権にもとづく占有を保護したいんだけど、複雑な社会においては本権を伴う占有かはわからないので、とりあえず占有権を保護するんでした。

スク東先生:おお、そうですね。結局、窃盗罪の保護法益は、占有権なんだけど、占有権のみを保護するのが目的じゃなくて究極的には本権(この場合、所有権)の保護も含まれているわけです。

東花子さん

なるほど、だから窃盗で、本権(所有権)の侵害も継続しているといえるので、売却による新たな法益侵害がないという話になるわけですね。

スク東先生:そういうこと、窃盗罪の保護法益の考え方に本権説があったりしますが、その辺りを意識できるとこの考え方もより理解できるでしょう。この機会にしっかり、整理してくださいね。それでは、時間となりましたので終わりにします。

では、また来週お楽しみに!!

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刑法総論・不可罰的事後行為を考えよう(予備24ー8肢エを題材にして 第4回)

前回のあらすじ

予備24−8エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】を検討しました。結論をいいますと、売却した行為は、窃盗とは牽連犯となりません。不可罰的事後行為について、理論構成を考えることになりました。

では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

ぼちぼちですね。

スク東先生:そうですか。とにかく体が資本なので、体調に気を付けていきましょう。早速、先週からの続きいきましょう。問題を載せておきます。

予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

本日は、不可罰的事後行為の理屈について整理していきましょう。
考えてこられましたか。

考えている

はい、一応。

スク東先生:よかった。聞かせてもらえますか。

東花子さん

えっと、結局、車を窃んだ行為で、売った行為も評価されていると理解します。

スク東先生:そうですね。結論は、あっているんですが、どうしてそう考えるんでしょう。

考えている

うーん、よくわかっていません。

スク東先生:なるほど、なんとなく結論、出すのはまずいです。少し、理論的になってしまうのですが窃盗罪の犯罪の性質ってわかります。

東花子さん

財産罪ですかね。

スク東先生:まあ、あっているんですが、不可罰的事後行為を語る上で関係ありそうな性質を言ってほしいですね。

東花子さん

うーん。

スク東先生:あらら、難しく考えてしまいましたか。状態犯ですよ。

東花子さん

そうですか、状態犯か。たしか、実行行為は即終了するけど、法益侵害は継続する犯罪類型でしたね。

スク東先生:おお、よく勉強されてますね。ポイント押さえているじゃないですか。そこがわかれば、不可罰的事後行為の理屈もわかるような気がするんですが。

東花子さん

えっ、どういうことでしょう?

スク東先生:なるほど、そうですか。あまりに、簡単に回答すぎると記憶に残らないのでダメですね。
しょうがない、今日は、少し時間をおいて考えてもらうことにしましょう。

東花子さん

わかりました。

スク東先生:まあ、気持ちが焦って早くいきたい気持ちはわかるのですが、ここはぐっと押さえて足元をしっかり固めていきましょう。それでは、今日も時間となりましたのでこの辺りにします。では、また来週お楽しみに!!

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刑法総論・不可罰的事後行為を考えよう(予備24ー8肢エを題材にして 第3回)

前回のあらすじ

予備24−8エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】を検討しました。結論をいいますと、売却した行為は、窃盗とは牽連犯となりません。この場合は、不可罰的事後行為になりますが、その意味について改めて考えることになりました。

では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

普通です。

スク東先生:ふーん、そうですか。それは何よりです。では、早速、今日もやっていきましょう。問題も確認しておきます。

予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

結局、前回、窃んだ行為と売却した行為は、一連の流れと評価できないことを確認しました。

考えている

はい、ですので科刑上一罪としての牽連犯ではないという話でしたね。

スク東先生:はい。そして、別行為と捉えると、むしろ、盗んだ行為(窃盗)と売却した行為(占有離脱物横領罪)は、併合罪ではという疑問をなげかけてました。

東花子さん

そうでした、そうでした。しかし、売約行為は不可罰的事後行為です。これが、なぜというのが質問でしたね。

スク東先生:いいですね。ポイント押さえてますね。それで結局、整理できましたか?

花子さん

はい、占有離脱物横領罪は、窃盗罪で評価されているっていう話だと思います。だから、窃盗罪のみ成立する。

スク東先生:そうですね。ただ、それは不可罰的事後行為の意味を言い換えているだけです。もちろん、結論は、あっているでしょうが、なぜ、そう考えるかが大事ですよ。

東花子さん

うーん。

スク東先生:なるほど、難しく考えすぎちゃいましたね。単純に、窃盗した自動車を売却した行為に犯罪成立させて、併合罪となると問題が生じますよ。

東花子さん

えっ、そうなんですか。なんで・・・。

スク東先生:なるほど、この辺りは、ちょっとイメージしないと難しいですかね。
実際、自動車を盗むのは、どうしてなんでしょう。
もちろん、いろいろ理由があるでしょうが、自分で自動車を使い続けると防犯なんかの関係ですぐ捕まっちゃいませんか?

東花子さん

なるほど、そうですね。

スク東先生:まあ、最近は世の中な人がいろいろいるので、なんともですが、通常、犯人は捕まりたくないはずなんです。ただ、それでも犯罪するということは、何か達成したい犯罪目的があるはずなんです。

花子さん

そうか、今回の場合、最終的に売ってお金にする。なるほど、犯人はお金がほしかったんだ。

スク東先生:いいですね。お金が欲しければ、最初からお金を盗めばよいと思ってしまうのでしょうが、お金は、貴重品なので厳重に管理されているはずです。
そうすると、犯罪成功の確率が落ちますね。大金であれば、なおさらです。

東花子さん

なるほど、なので、自動車なんかの物を盗んでお金にしようとすることを思いつくわけだ。

スク東先生:そういうこと!!結局、物を盗む目的に、そのあと売却してお金にかえるという話はよくある話なんです。盗品等有償譲受罪の存在も、まさしくそれを象徴してますね。
なお、これが牽連犯ではない理由は、前回確認した通りです。詳細はこちら

東花子さん

そうか、盗品等には、犯罪を助長する性格があるっていう話ありますものね。

スク東先生:はい、ですので、仮に本件のような売却行為に犯罪を成立させると、物が盗まれたときに多くのケースで、他の罪も成立することになります。

考えている

ふーん、そうなると捜査機関は自動車など物が盗まれる度に、余罪を見つけて実質、犯人を必要以上に重く処罰できちゃうわけだ。

スク東先生:そうです。ただ、それは刑が重くなりすぎて問題。そこで、売却行為に犯罪を成立させないとする必要がある。

東花子さん

なるほど、それで不可罰的事後行為ですね。

スク東先生:はい、こう見てみると、世の中の道理に合わせた感じで、理論的な説明がされていることがよくわかります。

考えている

そうですね。答えは知っていたのですが、状況を理解するとよりわかると感じました。

スク東先生:よかったです。こんな感じで考えながら勉強すると、ちょっとは、楽しくなるはずです。
そうすると記憶も定着しやすいですよ。

花子さん

確かに、そう思いました。

スク東先生:それで、不可罰的事後行為について、理屈をしっかり詰めていきたいのですが、なんか前提の状況を整理するだけで、おなか一杯な感じになっちゃいましたね。

東花子さん

そうですね。では、不可罰的事後行為の理屈は、次回詰めていく感じになりますか?

スク東先生:ええ、そうしたいと思います。せひ、東さんもそれまでにしっかり整理しておいてくださいね。それでは、今日も時間となりましたのでこの辺りにします。では、また来週お楽しみに!!

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