【前回のあらすじ】
刑法の司法30-14肢3を検討しました。次は肢4のようです。
それでは、はじまりはじまり。
スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。
スク東先生:なるほど、そうですか。まあ、寒くなってきましたが、淡々とやっていきましょう。
それでは、前回の続きということで、
司法試験平成30第14問肢「4.確定判決によって刑務所に収容されていた甲は,その看守に当たっていた刑務官に対する単なる反抗として同刑務官を押し倒したところ,同刑務官が気絶したため,その隙に逃走しようと思い立ち,同刑務所から逃走した。甲に加重逃走罪が成立する余地はない。」
を検討しましょう。
例によって、関係にない肢は割愛します。
それで、まず、正解はどうでしょう。
スク東先生:そうですね。結論は、大丈夫そうです。では、本問のポイントはどこでしょう。
スク東先生:おお、いいですね。理解をしっかりするために、条文も併せて確認してみましょう。
(逃走)
第97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。
(加重逃走)
第98条
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀して、逃走したときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
スク東先生:たしかに、「暴行をし」逃走したときに加重逃走罪が成立するように読めます。
スク東先生:そうですね。なぜでしょうかね。
スク東先生:なるほど、マイナーな問題なので、考え込んでしまいました。こういうときは、とにかく、難しく考えない方がいいです。加重逃走罪は、単純逃走罪(97条)より重い犯罪ですね。
スク東先生:まあ、慌てないで。97条も98条も、法益は国家の拘禁作用なわけです。加重逃走罪が成立するには、国家の拘禁作用への影響が大きい場合を想定していると思うんですよ。
スク東先生:はい、そこも踏まえて、改めてこの肢を読むとわかってくるんですよ。暴行を加えているように思うのですが、「単なる反抗として同刑務官を押し倒した」わけです。こういうことって、通常の流れで、想定できるのではないでしょうか。
スク東先生:でしょ。そこで、今回甲は、偶然の気を失ったという敵失に乗った形で逃走しているわけです。これは、もちろんとがめられるべき行為だと思うのですが・・・。
スク東先生:そうなんですよ。そう考えると、今回逃走させてしまったのは、国家側にも若干の不備があったわけです。
この場合も、加重逃走というのは少し重すぎという判断になります。
スク東先生:いいですね。そのように理解すると、法経侵害の程度が多くなるので、加重というのも、うなずけます。
スク東先生:よかったです。こういう細かなことを押さえるためには、イメージが大事です。やみくも覚えても、すぐ忘れてしまいます。その際も、あまり深入りすることはせず、こんな感じで、簡単に整理すると記憶に定着しやすいでしょう。ぜひ、細かいことを押さえる際に、参考にしてみてください。
それでは、今日も時間なりましたので、この辺りで終わりにします。この続きは、また来週お楽しみに。