【前回のあらすじ】
刑法の司法30-14を検討することになりました。
細かいことをやる際にも、ポイントがあるようですよ。
では、はじまり、はじまり。
スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。
スク東先生:なるほど、気が付けば、少し肌寒くなってきましたね。季節の変わり目は体調にも影響しやすいので気を付けましょう。早速、前回の続きをやっていきましょう。
改めて、問題はこちら。
〔平成30年 第14問〕(配点:2)
逃走の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.拘置所に未決勾留中の甲は,逃走しようと考え,房内の換気孔周辺の壁を削って損壊したものの,脱出可能な穴を開けられなかった。甲に加重逃走罪の未遂罪が成立する余地はない。
2.確定判決によってA刑務所に収容されていた甲は,B刑務所への護送中,刑務官の隙を見て護送車から脱出し,刑務官の追跡を完全に振り切って民家の庭に隠れたが,しばらくして,付近の捜索を継続していた刑務官に発見されて護送車に連れ戻された。甲に逃走罪の既遂罪が成立する余地はない。
3.刑務官である甲は,勤務先の拘置所に未決勾留中で,自らが看守していた被告人乙を逃走させようと考え,乙の房の扉を解錠し,乙を同拘置所から逃走させた。甲に看守者逃走援助罪が成立する余地はない。
4.確定判決によって刑務所に収容されていた甲は,その看守に当たっていた刑務官に対する単なる反抗として同刑務官を押し倒したところ,同刑務官が気絶したため,その隙に逃走しようと思い立ち,同刑務所から逃走した。甲に加重逃走罪が成立する余地はない。
5.甲は,逮捕状により警察官に逮捕された乙の身柄を奪い返そうと考え,路上において,乙を連行中の同警察官に対し,体当たりをする暴行を加え,同警察官がひるんだ隙に,同所から乙を連れ去った。甲に被拘禁者奪取罪が成立する余地はない。
そうですね。では、早速、「1.拘置所に未決勾留中の甲は,逃走しようと考え,房内の換気孔周辺の壁を削って損壊したものの,脱出可能な穴を開けられなかった。甲に加重逃走罪の未遂罪が成立する余地はない。」からいきましょう。結論は、加重逃走罪の未遂罪が成立する余地があるということですが、どうしてでしょうね。
スク東先生:なるほど、多くの方はそうでしょうね。逃走罪なんて、ほとんど勉強しないでしょうからね。ただ、考えてもらいたい方向性があります。わかりますか?
スク東先生:そう、そう。刑法の各論では、まず、法益を意識したいです。簡単な話、法益を守るために構成要件があるわけだから。
スク東先生:おおいいですね。よく、即答できました。なんか、いいことあったんですか?
スク東先生:なるほど、そうですか。勉強の方向性は良さそうです。あまり勉強しない犯罪でも、法益は押さえておきたいです。では、国家の拘禁作用から見ると、甲の行為はどうでしょう。
スク東先生:・・・・
スク東先生:いやぁ。問題文にわざわざ、事情があるわけですよ。これに対して、何かないんですかね。例えば、本件は、壁けづっただけで脱出可能な穴はあいてないんでしょ。そしたら、まだその穴から現実に逃げられないわけです。それでも、犯罪成立するんですかね。
スク東先生:そうです。この辺りを少しでも見ないと、題意に応えきってないわけです。もちろん、その上で、これでも加重逃走罪の未遂とする分にはいいわけです。
スク東先生:まあね。この問題だけなら、それでもいいですが・・・。その考え方だともったない気がします。実際、こうすることで論文での問題意識に気付く訓練もなると思いますよ。
スク東先生:はい、もちろん、実際の論文問題は、長文だし、これよりもっと複雑ですよ。でも、短い文で問題意識に出せなかったら、複雑な文でできますかね。
スク東先生:そうですね。もちろん、できることもあるかもしません。ただ、運に大きく左右されるでしょう。やはり、事前の準備では、できる限り考え抜くことが得策なわけです。
それをもってしても、最後の最後は、わからないわけですから。
スク東先生:はい、ぜひ、そうしてください。特に刑法の場合、短答と論文の親和性が高いように思います。こんな感じで考えましょう。
スク東先生:そうですね、大丈夫。忘れてないですよ。ということで、問題文の事実から生まれた実際の疑問を考えていきたいのですが・・・。
スク東先生:そういうこと!!感がいいですね。まあ、1度にいろいろいっても、混乱するだけですからね。ということで、この続きは、また今度にします。
それまでに、考えを整理しておいてくださいね。それでは、また来週、お楽しみに。