司法試験29年13問(民法)肢アを検討する 第4回 一般先取特権と特別先取特権の競合を考える(民法329条2項)その3

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平成29年予備試験民法(解説編)
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まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,司法試験29年13問(民法)肢「ア.共益の費用の先取特権は,全ての特別の先取特権に優先する。」を検討することになりました。条文があることはわかったのですが,意味を理解しないと忘れますよと指摘をうけました。
前提として329条2項本文の意味を確認しました。今日から,ただし書に入っていきます。
では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。調子はどうですか。

考えている

まあまあですね。

そうですか,暑い日が続きますが,体調を整えて勉強をしていきましょう。
今日からは,本肢で聞かれている,329条2項ただし書について検討していきます。
条文を載せておきますね。

(一般の先取特権)
第306条
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給

(一般の先取特権の順位)
第329条
1.(略)
2.一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。

結局,「共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する」となっておりますが,どうしてそうなっているんでしょうか。

東花子さん

まず,本文にあるように,一般の先取特権と特別の先取特権が競合した場合,特別が優先するのが原則です。そして共益の費用は一般の先取特権です(306条1号)。したがって,特別の先取特権があれば,こちらが優先するのが筋とも思えますね。

その通り!本文からはそういえます。ただ,「ただし書」で修正がされてます。

東花子さん

はい,何か問題があるのでしょうか?

まあ,そうだから条文があるはずですが,どうしてかわかりますか。

東花子さん

うーん,さっぱりです。

なるほど,さすがに,この状況だと難しいでしょうね。
こういう時は,具体的に考えるのが鉄則です。
共益の費用って,そもそもどんなものでしたっけ。

考えている

えっと,条文に規定があったような気が・・・。

そうですね。確認してみましょう。

(共益費用の先取特権)
第307条
1.共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
2.前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。

確かにあります。どうして,分かったんですか。

東花子さん

たまたまです。

それだと,再現性が取れませんね。まぐれ当たりっていうことだから。
もっと,実践的に何かいい手はありますか。

東花子さん

うーん,どうでしょう。

まあ,ちょっと質問が抽象的だったかもしれません。「共」「益」の費用ですよね。この言葉から連想できませんか。

東花子さん

なるほど,債権者の「共」同の利「益」のために支出された費用ですね。

その通り!結局,条文はありますが,そんなことが分からなくても書いてある言葉の意味から内容が連想できます。

考えている

確かに,それだと現場で考えられるので,実践的ですね。

はい,事前に覚えていることを吐き出すのではなくて,書いてあることをヒントに考えられるようにすると思考経済的にも良いです。これで,329条2項ただし書の意味も分かったんじゃないですか。

花子さん

はい,債権者の共同の利益のために支払われた費用です。したがって,利益を得た債権者に費用も負担させるのが公平だと思いました。

いいですね。そう考えると,共益の費用が優先権を主張できるのは,利益を得た債権者との間に限られるという意味もわかります。この道理が分かれば,本肢の解答も理論的に導けますね。

東花子さん

そうですね。やはり,利益状況から考えることが大事だと思いました。

いいですね。先取特権は,細かい知識が多く敬遠されがちです。しかし,こんな感じで考えながら押さえれば得点源にできます。ぜひ,頑張るようにしましょう。
では,今日も時間となりましたので,終わりにします。この続きは,また明日お楽しみに。



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