こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから
<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験28年6問(民法)肢3を検討することになりました。では,はじまり,はじまり。
こんにちは,東さん。早速,予備試験28年6問(民法)【司法試験28年11問(民法)】肢「3.留置権は,占有を第三者に奪われた場合も消滅しないが,その場合には,第三者に対抗することができない。」を検討していきます。
この肢は,どうですか。
なるほど,あってますね。どうして,そのように考えるのでしょうか。
そうですね。確認してみましょう。
(占有の喪失による留置権の消滅)
民法第302条
留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第298条第2項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
確かに,条文がありますね。しかし,それだと忘れてしまうと困ってしまいますね。
そうですね。留置権は,どういった担保物権でしたでしょうか。
いいですね。そうすると,留置物の占有を失ってしまったら,留置的効力もなくなってしまいますね。
はい,だから,302条ただし書の場合を除いては,担保物権としての実効性が乏しいので消滅することになってますね。
まあ,結論を出すには,それで概ね良いのですが,この肢は何と勘違いさせようとしたのでしょうか。
そうですか。動産質ですよ。条文も見てみましょう。
(動産質の対抗要件)
第352条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
そうですね。なかなか,分からないかもしれません。動産質の場合は,占有が奪われても第三者に対抗力がなくなるだけで,質権は消滅しないことになるのですが,なぜだか,わかりますか。
そうですね。ここからは,いろいろ考えられますが,質権を設定した後,質権設定者に目的物を渡す場合があるのでしょう。
条文は,禁止しているのですが・・・。
(質権設定者による代理占有の禁止)
第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
そうですね。物権法定主義が原則(175条)なので,余計そうでしょう。ただ,動産にも,非占有担保物権を認める必要性が高いです。ですので,判例は,質物を設定者に返還した場合にも,質権は当事者間で消滅しないで,第三者に対抗できないに過ぎないとしたのでしょうね。(大判5.12.25)。
そうですね,当事者間で質権設定契約を行っています。偶然の事情で,契約の拘束力を消滅させる合理的な理由もなさそうです。
この点でも,留置権と質権とで利益状況が大きく違いますね。いろいろ,考えてみましたが,こんなところで良いと思います。
留置権と動産質権の取扱いの違いをこの機会に押さえておきましょう。
では,時間となりましたので,終わりにします。この続きは,また明日,お楽しみに。