刑法 予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)肢1を考えてみよう

【前回のあらすじ】

今日から,刑法予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)を検討することになりました。
まずは,肢1からです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

まあまあです。

スク東先生:そうですか。寒くなってきましたので,体調管理気を付けましょう。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

刑法予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)肢1です。

「1.人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていた。甲は、これらの事実を認識した上で、その当時誰もいなかった建物Bに放火して建物Bを焼損した。この場合、建物Aに延焼しなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。」

正解はどうでしょう。

誤りです。

スク東先生:なんででしょう。

判例があります。最判平元.7.14〔刑百選Ⅱ-83第8版〕

スク東先生:なるほどね。それだと,まずいです。どのあたりが,問題点かわかりますか。

えっと,人がいるのは,建物Aです。甲が,放火したのは人が居住していない木造建物Bです。この辺りが問題だと思います。

スク東先生:いいですね,条文も確認しましょう。

(現住建造物等放火)
刑法第108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

(非現住建造物等放火)
刑法第109条
1.放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
2.(略)

木造家屋Bは,「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物」と言えそうです。したがって,109条1項が成立するのではという疑問がでますね。

スク東先生:そういうこと。そして,問題肢に,建物Aに延焼しなければとあるので,今回は延焼してないケースで考えたいです。そうすると,109条1項にとどまるのではという疑問がでます。実際,甲は,これら事実をすべて認識してます。したがって,非現住建造物等放火既遂ではということですね。

うーん,しかし,108条が正解です。109条1項だと刑が軽すぎるということですね。

スク東先生:そうですね。建物Aと建物Bを別としてしまうと,法益保護の観点から見て問題でしょう。渡り廊下でつながっていますからね。

なるほど。そこで,結局,物理的一体であれば,現住性がある。建物Aと建物Bは一体と見れます。

スク東先生:はい,ということで,108条が成立することになります。こんな感じで,争点を意識して検討するようにしましょう。これで無事検討が終わりました。今日はこれで終わりにします。この続きは,また来週お楽しみに。



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