刑法 予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)肢3を考えてみよう

【前回のあらすじ】

刑法予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)肢2を検討しました。
次は,肢3からです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

おめでとうございます。こちらこそ,今年もよろしくお願いします。

スク東先生:よかった。新年早々,元気そうですね。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

刑法予備試験令和5年第6問(司法試験令和5年第8問)肢3です。

「甲は,妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え,壁に掛けられたカレンダーに火をつけた。この場合,上記カレンダーが焼損した時点で,これに気付いた妻に火を消し止められ,他に燃え移らなかったのであれば,甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。」

正解はどうでしょう。

正しいです。

スク東先生:なんででしょう。

なんとなくかなー。

スク東先生:なるほど,それは,よくないですね。どのあたりが,問題になりそうですか。

うーん,肢には「カレンダーが焼損しています」とありますね。カレンダーは,形式的に建造物ではないですが,建造物の中にあります。この辺をどう見るのかなという問題だと思います。

スク東先生:そうですね。「甲は,妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え,壁に掛けられたカレンダーに火をつけ」ています。かなり危険な行為をしてます。だから,既遂とならないのかという問題です。どう考えていけばいいでしょう?

(現住建造物等放火)
刑法第108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

えっと,建造物が焼損したというには,少なくても建造物から容易に取り外せないことが必要です。108条がかなり重い犯罪です。このことから考えても,肢の事案で既遂は,早すぎます。カレンダーは,容易に取り外せますので,焼損しても,「建造物を焼損した」にあたりません。

スク東先生:なるほど,そうですね。よく勉強されております。では,どうなりますか。

はい,建物の中で放火してますので,現住建造物等放火罪の未遂(108条,112条)になります。

スク東先生:いいですね。しっかり押さえております。妻と二人で居住する木造家屋をもやすつもりで一連の行為をしており,108条の実行行為はありますからね。

そう思います。なお,108条の既遂になるには,建造物が独立して燃焼することが必要です。

スク東先生:そうですね。放火罪の保護法益が社会の公共の安全です。したがって,独立燃焼した段階で,社会の公共の安全に対する,抽象的な危険という結果が発生したと見れますからね。

はい,そう思いました。

スク東先生:いいでしょう。ポイント押さえられております。こんな感じで,結論を出すとよいでしょう。では,検討が終わったので,本日はここまでとします。この続きはまた,来週お楽しみに。



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