刑法総論・牽連犯を考えよう(予備24ー8肢エを題材にして 第2回)

前回のあらすじ

予備24−8エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】を検討しました。結論をいいますと、売却した行為は、不可罰的事後行為となり窃盗とは牽連犯となりません。これがなぜかということを改めて確認することにあったのでした。

では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

東花子さん

こんにちは。まあまあですかね。

スク東先生:なるほど、暑くなってきましたので、淡々とやれるそのくらいが丁度いいですかね。コツコツやっていきましょう。それで、前回の質問考えてきましたか。忘れないように問題文も載せておきますね。

予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

東花子さん

うーん。たしか、本問で盗んだ行為と売約した行為は、手段と目的の関係があるように見えますが、なぜか牽連犯にならないというのが問でしたね。結局、よくわかりませんした。

スク東先生:なるほど、条文確認しましたか。

考えている

いえ、見てません。

スク東先生:うーん、いやー一応、条文くらいは確認しましょうよ。これ見て何かわかりませんか。

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第54条 1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 (略)

東花子さん

なるほど、牽連犯が成立すると「その最も重い刑により処断する」。つまり、科刑上一罪になりますね。

スク東先生:いいですね。そこがポイントです。そうすると科刑上一罪と評価できる場面での適用が想定されててそうです。

東花子さんたしかに。今、思ったんですが観念的競合も同じ条文です。

スク東先生:そうそう、いいところに気付きました。確かに、牽連犯は、成立する犯罪の間に、手段と目的の関係が必要なのですが、一連の流れの中でやられることが想定されますね。

考えている

なるほど、よくわかりました。確かに、牽連犯の典型である住居侵入罪と窃盗なんかは、両罪の場所、時間が接着しており一連の流れの中で行われているといえますね。

スク東先生:そうなんです。その当たりをイメージすると科刑上一罪もうなづけます。ただ、気をつけたいのは、時間と場所が接着していなくても、両罪の間に障害なければ一連の流れの中で行われていると評価できます。
通貨偽造罪と偽造通貨行使罪(148条1項・2項)なんかの例で想定するといいでしょう。

考えている

そうですね、通貨の偽造行為と行使行為の間に、障害は入りにくそうです。

スク東先生:はい、一連の流れを捉える上で、間の障害を意識するのは、重要なので押さえておきましょう。
そうすると、本問の窃盗行為と売却行為の間には多くの障害がありそうです。「そもそもいい売却相手が相手が見つない」「捕まるのを恐れて気持ちが変わって自分が使うなど」さまざまのことが、考えられそうですね。

東花子さん

なるほど、要するに本問の2つ行為は、一連の流れのものといえないわけですね。

スク東先生:そうそう、別となります。そうすると、少なくても科刑上一罪である牽連犯は成立しないとなります。

東花子さん

よくわかりました。でも、盗んだあとの売却を不可罰的事後行為とするのは、なぜでしょう。もし、事実が別であれば、窃盗罪と占有離脱物横領罪の併合罪のような気もするのですが・・・・。

スク東先生:そうですね。いい所に気が付きました。ただ、その疑問については次回に触れることにしましょう。

考えている

なるほど、わかりました。それまでに、考えておきます。

スク東先生:はい、そうしてください。いろいろ一気に説明しても消化不良をなってしまいますからね。それでは、今日も時間となりましたので、終わりします。この続きは、また来週お楽しみに。

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刑法総論・牽連犯を考える(予備24ー8肢エを題材にして 第1回)

前回のあらすじ

前回から日頃、手薄になりがちな罪数論を検討しています。

では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

考えている

はい。ボチボチです。

スク東先生:本試験まで、あと1か月ほどですね。とは言っても、特別なことは不要です。淡々と大枠から考えることをやる。それでいいです。

東さん:はい、ありがとうございます。

 

スク東先生:では、早速、問題の検討をしていきましょう。罪数論の続きです。予備の24−8のエを見てみましょう。

予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

スク東先生:正しいですか。

東花子さん

間違いです。牽連犯とは、犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪名に触れる場合をいいます。(54条1項後段)今回の場合、自動車を盗んだ段階で、窃盗罪が成立してます。そして、犯人がその盗んだ車を売却したのは不可罰的事後行為です。だから、牽連犯でないと思います。

スク東先生:いいですね。また、ご指摘の通り、条文はそうですが、牽連犯の場合、手段(原因)と目的(結果)の関係ときに成立しえます。

東花子さん

そう思います。

スク東先生:はい、前提は、これでいいとして、なぜ、今回、不可罰的事後行為とするのでしょう。今回のケースで犯人は、車を売るために盗んだともいえます。ですので、窃盗と売却の際に問題となる占有離脱物横領罪は、手段(原因)と目的(結果)の関係にあるともいえませんか。

考えている

確かに!!。言われてみれば、問題意識に気付かなかったです。

スク東先生:はい、こういう点をケアしたいですね。そうしておくことで、対応力もつきますよ。

東花子さん

なるほど、では、どうしてこの場合、牽連犯にならんのでしょう。

スク東先生:あのー、それを考えてもらいたいのですが・・・。

考えている

確かに、いろいろ試行錯誤しないと記憶に残らないでものね。やってみたいと思います。

スク東先生:はい、頑張ってください。ただ、やみくもやるもあれなので、方向性を指摘したいと思います。牽連犯になると、どういう風な取扱いになりますか。その当たりに着目して整理するとよいでしょう。

 

考えている

なるほど、よくわからないときは、大枠からですね。

スク東先生:そういうこと!!頑張ってみましょう。それでは、今日も時間となりましたのこの辺りで終わりにします。この続きはまた、来週お楽しみに。

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刑法総論・観念的競合を考える(予備24ー8肢アを題材にして)

前回のあらすじ
短答過去問・司法28-19を使い、5回にわたり共犯の問題を検討しました。今回から日頃、手薄になりがちな罪数論を検討します。
では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、勉強は、進んでいますか。

東花子さん

はい、焦っても仕方がないと思い、出来ることを1つ1つ丁寧に押さえています。


スク東先生:それでいいです。とにかく、淡々と考える勉強を続けていってください。

東さん:はい。そうします。

スク東先生:では、早速、問題の検討をしていきましょう。罪数論ということで、予備の24−8のアから見てみましょう。



予備24−8 次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し、成立する犯罪が【】内の罪数にある場合には1を、【】内の罪数にない場合には2を選びなさい。

ア.公務員が、電化製品を盗品であると知りながら、賄賂として収受した。【観念的競合】

スク東先生:どうですか。

東さん:はい、観念的競合で○です。だから、1です。

スク東先生:そうですね。でも、なぜですか。というか、そもそも観念的競合って、何ですか。

東花子さん

えっと、1つの犯罪行為が、2つ以上の犯罪構成要件に該当することをいいます。


スク東先生:そうですね。では、どうやって観念的競合を判断するでしょうか。

東さん:確か、自然的観察のもと、客観的に見て複数の犯罪に該当するが、行為自体1つだと評価出来るという、場合だと思います。

スク東先生:いいですね。よくポイント押さえてます。

本件でいえば、公務員は「電化製品を盗品と知りながら」とあるので、まず盗品等無償譲受罪(刑法256条1項)が成立し、その上で当該盗品を「賄賂として収受」しているので、単純収賄罪(197条1項前段)が成立します。盗品は、有償か無償かわかりませんが、賄賂としてとあるので、ここでは、無償でもらっているとしましょう。

考えている

はい、収受行為で、「被害者の追求権」と「職務公正および公務員に対する社会の信頼」を害してますからね。個人的法益と国家的法益の侵害をそれぞれ、評価することになる。


スク東先生:その通り!よく、勉強されてます。公務員は、かかる2つの犯罪に関わる行為を1度で行っていますので、「観念的競合」になりますね。

では、観念的競合の効果は、知っていますか。

花子さん

あれ、なっだっけ。

スク東先生:あらら。そこしっかり、押さえたいです。複数の該当する犯罪のうち、1番重い刑を科されますよ(54条1項前段)。こういう取扱いのことを何というでしょう? 東さん:えっと、科刑上一罪だったと思います。罪数としては、今回の場合2罪ですね。 スク東先生:おお、いいですね。そこまで、分かっていれば大丈夫でしょう。ただ、答えを出すだけでダメで、今見たいにしっかり、理解をして正解したいですね。罪数問題は、細かいので敬遠しがちですが、理解をすれば得点源になるので、この機会にしっかり押さえてもらえればと思います。 東さん:わかりました。ありがとうございます。 スク東先生:いい返事ですね。ぜひ、その調子で頑張っていきましょう。これで終わりにしたい思いますが、次回は肢エを検討したいと思います。 予備24−8
エ.自動車を盗み、これを売却した【牽連犯】

この肢について、少し考えてみてください。その際には、罪数の答え以外に、周辺のことも少し整理しておいてください。 それでは、今日も時間となりましたので終わりします。この続きはまた、来週お楽しみに。
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刑法総論・共犯5

前回のあらすじ
短答過去問・司法28-19-4を使って、共犯の問題を検討しました。今回は共犯の最終回、引き続き司法試験28-19の問題を使って検討しましょう。では、はじまり、はじまり。
スク東先生:こんにちは、東さん。調子は、どうですか。

考えている

まあ、ぼちぼちです。

スク東先生:そうですか。まあ、焦っても仕方ありません。1つ1つ、大枠の理解からやっていきましょう。

東さん:はい。 スク東先生:では早速、司法試験短答式問題の平成28年第19問 選択肢5の検討に入ります。

司法28−19
5.暴力団組員乙は、対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し、誰にも犯行の決意を打ち明けることなく、小刀を持ってA方に向かったところ、乙の舎弟である甲は、乙の決意を察し、仮に乙がAから反撃されそうになった場合は、自分がAを殺害しようと考え、乙に何も告げることなく、拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが、乙は、玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には、乙の殺人罪の従犯が成立する。


スク東先生:結論は、どうでしょう。

東さん:間違っています。甲には、幇助罪は成立しません。


スク東先生:そうですね。では、なぜですか。乙は、誰にも犯行の決意を打ち明けていません。しかし、甲は、乙が殺害し損なった場合、自分が代わりにAを殺害しようと拳銃を持ってA方付近に隠れていました。この甲の行為を処罰しなくてもいいのでしょうか。

東花子さん

たしかに、処罰すべきようにも思われます。現に、甲は乙との連絡がなくとも、乙のA殺害の意図を察して、拳銃を持ってA方付近に隠れています。甲の待ち伏せ行為自体、危険性が高いようにも思われます。たまたま連絡がないからと、幇助が成立しないのも法益保護の簡単から見て問題とも思われます。



スク東先生:おお、その通り。論理を貫いたときの不都合性ですね。で、それにもかかわらず、幇助犯が成立しないのはなぜですか。



東さん:えーと……。ポイントは、幇助とはいかなる行為かを、考えるといい思います。



スク東先生:はい、その通り。それでは、幇助とは、いかなるものでしょう。


東さん:はい、正犯の犯罪行為を容易にする行為をいいます。犯罪行為を容易にするということから、物理的に容易にする場合と、精神的に犯行を容易にする場合の2つのケースが考えられます。

今回の場合、甲は乙がAに反撃されそうになった場合に備えて、拳銃を持ってA方付近に隠れていただけです。たしかに、拳銃自体は、所持しているだけでも人を殺傷する危険の高いものといえます。しかし、乙は、甲の存在すら気付いていません。物理的にも精神的にも乙のAに対する殺害行為を容易にする関係には、ありません。そうすると、乙の殺害行為との因果性を認めることはできません。したがって、甲の行為は、無関係な行為と評価できます。


スク東先生:そうですね。だから、甲は殺人罪の幇助には当たらない。銃刀法の問題は別途考えられるでしょうが、乙の殺人の実行行為を容易にしたことにはならない、したがって、幇助には当らないとなります。

甲には、悪い心はありますが、幇助行為がない。だから、この場合、幇助罪で罰することはできない、ということですね。


東さん:はい、そうです。


スク東先生:東さん、しっかり幇助を理解できてますね。この調子でいきましょう。では、そろそろ時間です。

来週は、皆さんが手薄になりがちな罪数論を検討します。お楽しみに。

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刑法総論・共犯4

前回のあらすじ

 短答過去問・司法28−19を使って、共犯の問題を検討しました。今回も、引き続き共犯の問題を考えてみます。

 では、はじまり、はじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。最近の調子は、どうですか。

考えている

ボチボチです。

スク東先生:そうですか。「緊急事態宣言の解除」で、世間が徐々に動きだましたね。延期された試験日程も無事発表されましたしね。まだ、安心はできませんが、勉強も気合いを入れていきましょう。

東さん:はい。

スク東先生:では早速、司法試験短答式問題の平成28年第19問 選択肢4の検討に入りましょう。

司法28−19

4 甲と乙は、A方に強盗に入ることを計画し、それぞれ包丁を持ってA方に侵入し、Aを包丁で脅かした上、室内を物色していたところ、家人B、Cに犯行を目撃され、甲はBに捕まったが、乙は逮捕を免れるためCの腕を包丁で切り付けて傷害を負わせた。甲には、住居侵入罪のほか強盗致傷罪の共同正犯が成立する。

スク東先生:正しいですか。

東さん:正解です。

スク東先生:そうですね。では、なぜでしょうか。甲と乙は、A方への住居侵入と強盗の犯罪についての共謀は認められますが、家人への傷害については、共謀してませんよ。

話し合ってもいないことまで犯罪を成立させるのは、刑法の謙抑主義に反するのではないでしょうか。

東花子さん

うーん、そっか。でも、確か他の過去問で同じような事例で強盗致傷罪の成立を認めていました。

スク東先生:その解き方は、まずいですね。頭の隅の記憶を思い起こして解いていても、すぐに忘れてしまいますよ。論理的に解かないと・・・。

 そこで、もう一度。どうして共謀してもいないCさんへの傷害についてまで、共犯者の甲は罪責を追わなければならないのでしょう。前回までで共犯のポイントはどういう話をしていましたっけ。

東花子さん

えーと……。あっ、共犯の処罰根拠だ。

スク東先生:その通り!!いいじゃないですか、そこから考えていきましょう。で、どうですか。

東さん:確か、因果的共犯論が、共犯の処罰根拠でした。この場合、甲は乙とA方に住居侵入し、強盗することを計画しています。強盗とは、暴行、脅迫行為で相手方の意思を制圧して財物を奪う犯罪です。当然、暴行の延長上で、被害者に傷害を負わせることは予想できます。

したがって、共犯者甲も正犯を通して「傷害」という法益侵害の結果を惹起しているので、強盗致傷罪が成立する……。

あっ、そうか。こんな風に解くんだ。

スク東先生:そうです。まさに、それが論理的思考です。難しく考えないことが大事です。細かな判例の知識を覚えることは、聞いていません。

どうです、大枠の理解が分かるとキチンと解けますでしょ。

花子さん

ええ、本当ですね。今回の問題は、強盗という基本犯についての共謀があれば、重い結果についても規範に直面する。だから、結果的加重犯である強盗致傷罪についても、自らが手を下していなくても罪責を負うのですね。よく分かりました。

スク東先生:その通りです。よかった。この調子でいきましょう。

そろそろ時間が来たので、終わります。

次回も、共犯論を検討します。お楽しみに。

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