予備試験29年7問(民法)肢イを検討する 第3回 売買契約の損害賠償請求の主張立証を考えよう

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年7問(民法)肢イを検討することになりました。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,予備試験29年第7問(民法)肢「イ.売買代金の履行遅滞に基づく損害賠償請求において,同時履行の抗弁権が存在する場合には履行遅滞に陥らないとの見解に立つ場合,損害賠償を求める原告は,請求原因事実として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。」を検討していきましょう。

この肢は,正しいですか,間違ってますか。

東花子さん

正しいですね。

そうですね。どうしてでしょう。

考えている

いわゆる,「せり上がり」と聞いたことがあります。したがって,「請求原因事実として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない」と思いました。

良く勉強されてますね。どうして,そうなるのでしょう。

東花子さん

よく分かっていません。

そうですか。そういうときは,逆に「せり上がらない」と,どういうことになるかを考えたいですね。

考えている

なるほど,無駄なことをやる必要はないでしょうからね。

はい,当事者としても,必要最小限の主張立証で足りるとした方が,訴訟活動がしやすいはずですから。

東花子さん

考えるべき方向性は,わかりました。

はい,それでは,仮に請求原因事実として「自己の債務の履行又は履行の提供」の主張立証なしに損害賠償ができたら,どうなるでしょう。
415条には「自己の債務の履行又は履行の提供」についての記載がありません。したがって,論理的にあり得る考えです。

(売買)
第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(債務不履行による損害賠償)
第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

東花子さん

なるほど,その場合,相手は「抗弁」として同時履行の抗弁を主張立証してくるはずです。

そうですね。同時履行の関係であれば,履行しないことに正当な理由がありますからね。その後,原告が再抗弁として「自己の債務の履行又は履行の提供」を主張立証することになりそうです。

東花子さん

うーん,毎回,当事者に行わせるのは,全体的に少し迂遠のように思いました。

そうですね。売買契約は,一般的に数も多いです。その際の損害賠償請求について,問題解決に迂遠となるようなことは取引安全を図る上でも,政策上できるだけ避けたいですね。

東花子さん

なるほど,だから少しでも早く問題解決ができるように,いわゆる「せり上がり」を要求しているのですね。

概ね,そんなところで大丈夫でしょう。そして,問題文にもありますが,「売買代金の履行遅滞に基づく損害賠償請求において,同時履行の抗弁権が存在する場合には履行遅滞に陥らない」と考れば,法的にも「請求原因事実として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない」ということが自然と導けます。

花子さん

確かに,うまく法的に「せりあがり」の説明がなされていますね。よく分かりました。

はい,問題文で使われている表現も意識したいところです。
正解を出すことだけに意識を向けると,こういった視点はでてきません。ぜひ,気を付けましょう。
では,今日は,ここまでとします。それでは,この続きは,また明日お楽しみに。



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予備試験29年7問(民法)肢アを検討する 第2回 民法545条2項を考えよう

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<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年7問(民法)肢アを検討することになりました。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,予備試験29年第7問(民法)肢「ア.動産の売買契約が締結され,その代金の一部が支払われた後で,当該売買契約が債務不履行を理由に解除された場合,売主は,受領した売買代金の一部を返還するに当たり,その受領の時からの利息を付す必要はない。」を検討していきましょう。

この肢は,正しいですか,間違ってますか。

東花子さん

間違ってますね。

そうですね。どうしてでしょうか。

考えている

条文があります(545条2項)。

そうですね。確認して見ましょう。

(解除の効果)
民法第545条
1.当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2.前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3.解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

確かに,条文があります。ただ,本番では条文が見れません。

東花子さん

はい,なので意味を確認していく必要性があります。

そうですね。どうしてか考えていきましょう。まず,解除の効果はどうなりますか。

考えている

遡及的に消滅します(直接効果説)。

いいですね。解除の効果が,遡及効(直接効果説)なのか将来効(間接効果説)なのかは争いがありますが,当事者の合理的意思から遡及効と解されてますね。その位で,いいでしょう。
解除の効果を遡及効と考えると,利息をいつの時点から戻すのが公平でしょうか。

東花子さん

条文の通り,受領時だと思います。

なるほど,もちろんあっているのですが,なぜでしょう。

東花子さん

利息は運用利益に代わるものです。金銭の場合,受け取った時点で運用利益が発生すると思います。

いいですね,続けてください。

東花子さん

はい,そこで遡及的に解除によって契約の効果が消滅するのであれば,金銭の運用利益は買主にあるのが公平だと思いました。

そうですね。契約が初めからなかったとすると,買主は契約の代金(金銭)を売主に渡していなかったはずですからね。
良くできました。条文を押さえるにも,意味を理解して押さえると固い知識となります。

花子さん

そうですね。意味を押さえていれば,自信をもって回答できます。

その通りです。ぜひ,この調子で頑張ってください。では,今日は,ここまでとします。それでは,この続きは,また明日お楽しみに。



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予備試験29年7問(民法)を検討する 第1回 導入編

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<前回までのあらすじ>
花子さんは,今日から,予備試験29年7問(民法)を検討していきます。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。調子はどうですか。

考えている

ぼちぼちですね。

そうですか,淡々と検討していきましょう。

早速,今日からは,予備試験29年第7問【司法試験29年第16問】(民法)です。では,問題はこちら
債務不履行に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

  • ア.動産の売買契約が締結され,その代金の一部が支払われた後で,当該売買契約が債務不履行を理由に解除された場合,売主は,受領した売買代金の一部を返還するに当たり,その受領の時からの利息を付す必要はない。
  • イ.売買代金の履行遅滞に基づく損害賠償請求において,同時履行の抗弁権が存在する場合には履行遅滞に陥らないとの見解に立つ場合,損害賠償を求める原告は,請求原因事実として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。
  • ウ.AB間で売買契約が締結され,Aが債務不履行に陥っている場合において,AがBに対して相当の期間を定めて契約を解除するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず,Bがその期間内に解除の通知をしないときは,Aは,以後債務不履行責任を負わない。
  • エ.AがBに建物を賃貸し,BがAの承諾を得てCに同建物を転貸した場合において,AB間の賃貸借契約がBの債務不履行を理由とする解除により終了したときは,AがCに建物の返還を請求しても,Aが転貸借を承諾していた以上,BC間の転貸借契約におけるBのCに対する債務は履行不能とはならない。
  • オ.期限の定めのない金銭消費貸借契約の借主は,貸主が相当の期間を定めずに催告をしても,相当の期間を経過した時から履行遅滞の責任を負う。

1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

東花子さん

うーん。なるほど,債務不履行に関する問題ですね。

はい,そうですね。重要なテーマなので,しっかり,確認していきましょう。
では,早速,肢アから検討しようと思ったのですが,時間がかかりそうなので,ここまでといたします。
それでは,また,明日。お楽しみに。



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予備試験29年6問(民法)肢オを検討する 第10回 民法389条を理解しよう その3

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年6問(民法)肢「オ.本件抵当権の登記がされた後に,CがDに対し甲土地を賃貸し,Dが甲土地上に乙建物を建築して所有する場合において,Dが甲土地の占有についてAに対抗することができる権利を有しないときは,Aは,Dの承諾の有無にかかわらず,甲土地及び乙建物を一括して競売することができる。」を検討することになりました。なお,事実関係は,AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合です。
結論からいうと,389条の通りなのですが,意味を理解しないといけませんとなりました。
その後,一括競売の必要性は確認できたのですが,建物所有者の保護は大丈夫かとの疑問がでました。
東さんは,うまく説明できるでしょうか。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,続きを始めていきましょう。忘れないように,条文を載せておきます。

(抵当地の上の建物の競売)
民法第389条
1.抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2.前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

結局,建物所有者(本件D)は,あずかり知らぬ事情で,競売されてしまいますが,大丈夫でしょうかという質問でした。

東花子さん

そうでした,そうでした。

それで,考えてこられましたか。

考えている

うーん,おそらくですが,Dから見れば,建物を取り壊すより,良いでしょうという話だと思いました。

いい視点ですね。どういうことでしょう。

東花子さん

はい,昨日もやりましたが,甲土地のみが競売されると乙建物は無権限で甲土地にあることになります。甲土地を競売で取得した者に物権的請求権を行使されると,乙建物を撤去しないといけません。

いいですね。その時に,乙建物に投じた投下資本は,Dは回収できるでしょうか。

東花子さん

難しいでしょうね。

そうですね。Dから見ても,競売で代価を回収できた方がいいだろうという理屈になります。

東花子さん

はい,よーく見ると,398条1項ただし書で,「その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。」となっています。

はい,建物の代価は,建物所有者であるDに入ります。

東花子さん

なるほど,大筋わかりました。でも,先生,Dとしては,やっぱり建物の代価が入っても競売そのものが,困る場合があるのではないでしょうか。

なるほど,そうですね。建物所有者(本件D)は,抵当権者Aに劣後するのは,登記により初めから分かっています。ただ,東さんの指摘の通り,Dも自分で建物を保全したい場合もあるでしょう。その場合の制度もキチンと用意されていますよ。

東花子さん

そうなんですか。

はい,この条文を確認しましょう。

(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
民法第387条
1.登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2.抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

考えている

387条1項で同意の登記を具備できれば,Dも建物の権利を保全できるのですね。

はい,387条もこの機会に押さえておくと良いでしょう。問題文を改めてみると,「Dが甲土地の占有についてAに対抗することができる権利を有しないとき」と書いてありますね。

東花子さん

いやー,確かにそうですね。気づきませんでした。

そうですね。もちろん,試験本番でそんなことまで,気にしている方はおそらくいないでしょう。ただ,検討の段階では,一歩先を深く検討したいですね。そうすると,理解力も上がってきますよ。それでは,今日はここまでとします。この続きは,また明日お楽しみに。



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予備試験29年6問(民法)肢オを検討する 第9回 民法389条を理解しよう その2

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年6問(民法)肢「オ.本件抵当権の登記がされた後に,CがDに対し甲土地を賃貸し,Dが甲土地上に乙建物を建築して所有する場合において,Dが甲土地の占有についてAに対抗することができる権利を有しないときは,Aは,Dの承諾の有無にかかわらず,甲土地及び乙建物を一括して競売することができる。」を検討することになりました。なお,事実関係は,AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合です。
結論からいうと,389条通りなのですが,意味を理解しないといけませんねという話になりました。
基本から考えることが重要のようですが,果たして東さんは,しっかり考えてこれたでしょうか。
では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,続きを始めていきましょう。条文を改めて載せておきますね。

(抵当地の上の建物の競売)
民法第389条
1.抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2.前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

結局,考えてきましたか。

東花子さん

一応,整理してきました。

そうですか。それでは,基本から確認してきましょう。まず,本件では甲土地に抵当権がついていますが,一般に,甲土地の抵当権で,乙建物を競売できますか。

考えている

それは,できないと思います。不動産が別なので・・・。

いいですね。土地と建物は,不動産として別です。条文わかりますか。

東花子さん

えっ,よく分かりません。

370条本文で土地と建物が別と読めますよ。

(抵当権の効力の及ぶ範囲)
民法第370条
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

東花子さん

なるほど,「抵当地の上に存する建物を除き」というのが,土地と建物が別であることを前提にしていますね。

まあ,本題ではありませんが,参考までに押えておきましょう。では,甲土地の抵当権で,乙建物が競売できないとすると,通常は,どのような取扱いになりますか。

東花子さん

甲土地を競売で譲り受けたものが,乙建物の所有者(本件であればD)に対して,物権的請求権を行使していくことになります。

そうですね。甲土地の抵当権の登記が乙建物よりも先なので,抵当権は乙建物に対抗できます。

考えている

はい,本件抵当権は,甲土地を更地として交換価値を把握していることになります。乙建物は無権限で甲土地にあることになります。

はい,そうすると,Dは,乙建物を取り壊してでていくことが考えられますね。

花子さん

そう思います。ただ,土地の買受人が宅地として使いたい場合は,無駄が生じますね。

良い視点です。どういうことでしょう。

東花子さん

はい,結局,乙建物を取り壊した後に,例えば丙建物を立て直さないといけなくなります。

いいですね,問題点がでました。このことは,非常に迂遠です。いまある建物を活用できた方が効率的です。

考えている

そうですね。乙建物に特に価値がある場合は,なおさら,そうだと思いました。

はい,だから,この場合には,甲土地と乙建物を一括して競売できるようにする必要があります。

東花子さん

わかります。

一括競売の必要性は,見えてきました。あと,許容性(Dから見ると)どうでしょうか。
勝手に,自分の建物があずかり知らぬ事情で競売されてしまいますが・・・。

東花子さん

あれ,どうだったけ。うーん。

そうですか。では,長くなってきましたので,この辺りで切りましょう。結局,理解をするには腰を据えることが大事です。
ぜひ,考えてみましょう。それでは,この続きは,また明日お楽しみに。



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