刑法・令和2年第2問肢3を考えてみよう  その1

【前回のあらすじ】

刑法令和2年第2問肢2を検討しました。次は、肢3を考えていきましょう。

それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうです。

考えている

今日は、普段より調子いいかもしれません。

スク東先生:なるほど、そうですか。少し暖かくなってきましたからね。ただ、こういうときこそ、体調管理には気を付けたいですね。では、早速、前回の続きをやっていきましょう。問題はこちら。

〔司法試験令和2第2問・予備試験令和2年8問〕
3.株式会社の取締役経理部長甲は,同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合,甲が,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので,甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど,専ら会社のためにしたとは認められないときは,甲には,業務上横領罪が成立する。

(他の肢は省略)

スク東先生:これは、どうでしょう?

東花子さん

えっと、正しいですね。

スク東先生:なるほど、結論はあってます。どのあたりが、ポイントになるのでしょうか。

花子さん

そうですね。甲は,「会社の不利益を回避する意図」を有してます。ここが、ひっかかりですかね。

スク東先生:いいですね。問題文の事情をきちんと拾えてます。もし、この「会社の不利益を回避する意図」だった場合、どういう結論になりますか。

東花子さん

専ら、Aのためにあったとすれば、「委託信任関係に背いて所有者として振るまう行為」していないので、不法領得の意思が否定されると思います。

スク東先生:それで大丈夫でしょう。ただ、本件の場合は業務上横領罪を成立させてます。どこが問題になったのでしょうか。

東花子さん

はい、「当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので,甲が自己の弱みを隠す意図をも有していた」とあります。会社の損害が大きいことや、甲自身のためでもある点が、甲を処罰しないとまずい理由だと思います。

スク東先生:そうですね。これらの事情があれば、「専ら会社のためにしたとは認められない」となり不法領得の意思はあるという説明になります。

考えている

あと、加えると他の構成要件は、問題なく認められます。したがって、業務上横領罪が成立します。

スク東先生:いいでしょう。この肢は、問題文の事実をひろって、利益状況を押さえる。その上で、法を解釈して、結論の妥当性を図っていけば、大丈夫だと思います。

東花子さん

わかりました。ただ、今日は、あっさりでしたね。

スク東先生:たまには、こういうこともあります。要は、ポイントが確認わかればいいわけです。したがって、ある程度は柔軟にいきたいですね。それでは、本日はここまでといたします。この続きはまた来週、お楽しみに。

カテゴリー: 刑法 | コメントをどうぞ

刑法・令和2年第2問肢2を考えてみよう その2

【前回のあらすじ】

刑法令和2年第2問肢2を検討してます。その際に状況をよく把握することが大事のようです。
一緒に整理していきましょう。

それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

考えている

並です。

スク東先生:なるほど、新たなパターンをいれてきましたね。では、前回の肢2の続きいきましょう。

〔司法試験令和2第2問・予備試験令和2年8問〕

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
2.甲は,乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管していたところ,乙に無断でその現金全てを抜き取り,自己の遊興費に費消した。この場合,甲には,横領罪が成立する。

(他の肢は省略)

スク東先生:横領罪が成立しないことは指摘したのですが、利益状況を確認したいという話でしたね。整理されてきましたか。

東花子さん

そうですね、一応・・・。この場合、横領だと軽いように感じました。

スク東先生:なるほど、条文を見てみましょう。

(横領)
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2 (略)

(窃盗)
第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

スク東先生:確かに横領罪は、窃盗に比べると法定刑が低いです。

花子さん

はい、そして「共同管理」とはいえ、わざわざ金庫の中で管理しているわけです。そうすると、単純に少しでも被害者を保護する必要があるんじゃかいかと。

スク東先生:いいですね、被害者を意識する感覚は大事です。ただ、だから重い犯罪というのも自由保障から見て問題です。そこで、つじつまをどう合わせるかを考えるわけですね。

東花子さん

そうですね。結局、金庫の中の乙がおいた現金には、乙の占有が及んでいるということになります。そして、厳重に管理しているので第三者には触らせない意思があると思いました。

スク東先生:大丈夫でしょう。ですので、甲の行為は窃盗罪となります。少しわかりずらくなりましたが、中身に対して窃盗罪が成立するのは、現金の入った封筒の第三者に預けたケースと方向性をあわせるといいでしょう。

東花子さん

なるほど、封筒の中身をとったら窃盗罪という事例ありましたね。

スク東先生:似たような事案を思い出して比較する方法も、解答をだす方法として使えるでしょう。それでは、検討も無事終わりましたので、今日はこれで終わりにします。この続きはまた、来週お楽しみに。

カテゴリー: 刑法 | コメントをどうぞ

刑法・令和2年第2問肢2を考えてみよう  その1

【前回のあらすじ】

刑法令和2年第2問肢1を検討しました。次は肢2です。

それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

考えている

まあまあです。

スク東先生:なるほど、そうですか。では、早速、肢2を検討していきましょう。

〔司法試験令和2第2問・予備試験令和2年8問〕

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
2.甲は,乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管していたところ,乙に無断でその現金全てを抜き取り,自己の遊興費に費消した。この場合,甲には,横領罪が成立する。

(他の肢は省略)

スク東先生:正解は、どうでしょう。

東花子さん

そうですね。横領罪は成立しません、窃盗罪が成立するように思います。

スク東先生:いいですね。結論はあってますが、なんででしょう。

花子さん

えっと、なんでだろう。

スク東先生:いやー、元気よくそんなこと言われてもね。結論だけあっても仕方ないですよ。気を取り直して、どのあたりが、本問のポイントなんでしょうか。

東花子さん

「甲は,乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管」していたことが、ポイントのように思います。

スク東先生:あれ!?いいじゃないですか。

考えている

ありがとうございます。やっぱり、問題文ですね。

スク東先生:その考え方は大事です。それで、横領罪との関係で、どういうことが、いえそうですか。

東花子さん

えっと、金庫内の現金は共同管理をしているので、乙の現金の占有は甲にもあるのでは?ということだと思います。

スク東先生:そうですね。甲の罪責が横領罪なら、金庫内の乙の現金について委託信任関係に基づく占有が、甲にあったとならざるをえません。その事実をなんとかいうために「共同管理」という事情を使うわけです。

東花子さん

しかし、横領罪は成立しない。窃盗罪となるわけです。どう考えていきましょうか。

スク東先生:結論だけみると、乙の現金に甲の占有がないということなんでしょう。ただ、そんなこと現場でいきなり判断ぱっとできますかね。

花子さん

はい、自信ない!!

スク東先生:いやいや、そこ元気よくやるとこじゃないから・・・、わかりました。それじゃ、ちょっと状況をイメージして考えたいのですが。そうですね、この先、少し長くなりそうなので今日はここまでとします。

東花子さん

そうですか、わかりました。

スク東先生:はい、東さんも少し時間があるので、利益状況をイメージしてください。ただ、その際、くれぐれも難しいことはやらないでくださいね。では、今日も時間となりましたので、この辺りで終わりにしたいと思います。この続きは、また来週お楽しみに。

カテゴリー: 刑法 | コメントをどうぞ

刑法・令和2年第2問を考えてみよう その4

【前回のあらすじ】

刑法令和2年第2問肢1を検討することになりました。横領罪が未遂はないのですが、犯罪の成立時期として実行の着手の考え方が使えるのでないかという話になりました。その辺りの話を整理していきましょう。

それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

考えている

普通です。

スク東先生:なるほど、そうですか。では、早速、前回の肢1の続きいきましょう。

〔司法試験令和2第2問・予備試験令和2年8問〕

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。

(他の肢は省略)

(横領)
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

スク東先生:前回は、横領罪の成立時期を検討するにあたって、未遂がないことを指摘した上で、危険犯ということも確認しました。

東花子さん

はい、法益侵害の危険性も押さえないと刑法の目的が達成できないからですね。

スク東先生:そこで犯罪成立する時期を検討するにあたって、実行の着手を意識したいとことでした。

東花子さん

そうですね。あくまでも実行の着手は、未遂の規定です。ただ、軽い犯罪の場合は、未遂と既遂が1つになっているイメージ考えて処理をするという話をしていました。

スク東先生:そうです。ですので、結果的に危険な結果の発生したかを判断するには、実行の着手を考えればよいという説明になります。

考えている

はい、その続きが今日でしたね。結局、どうやって具体的危険が発生した時期を判断すればよいのでしょうか?

スク東先生:えっと、東さんに、それを考えてきてほしかったんですよ。

花子さん

そうでした。そうでした。えっと、まず客観を見る。その上で、主観や、計画など諸般の事情も総合的に考慮すればよいと思います。

スク東先生:いいでしょう。心を処罰するわけにはいきませんので、客観が必要なのは当然ですね。ただ、それだけだと、危険性を認定できません。どうつもりで、行為をしたことも含めて具体的危険性を判断する必要がありますね。

東花子さん

はい、そう思います。

スク東先生:よかった。ここまで、押さえるとようやく、肢1がしっかり理解できると思います。客観、主観、計画などを総合考慮して、横領罪の法益である所有権に対する危険性は発生してますかね。

考えている

うーん、さすがに早すぎるということなのでしょう。取り出した段階で「衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え」ているので、主観、計画はあると思うのですが・・・。

スク東先生:そうですね。まだ、甲は、衣類を取り出しただけです。この段階では、実際に古着屋やいくかどうかははっきりしません。

東花子さん

はい、客観的にみて売却するまでの距離が、時間的にも場所的にも離れているように思います。

スク東先生:いいですね。したがって、客観的に具体的危険性がないと判断できるでしょう。よって、主観、計画があっても横領罪不成立なります。問いに対応するなら、「衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえ」ないとなりますね。

花子さん

わかりました。

スク東先生:よかった。無事検討が終わりました。この問題のテーマは各論(横領罪)の問題なのですが、背後にある総論の理解も踏まえたいですね。そうすると、理解が深まると思います。では、今日はこんなところで、終わりします。この続きは、また来週お楽しみに。

カテゴリー: 刑法 | コメントをどうぞ

刑法・令和2年第2問を考えてみよう その3

【前回のあらすじ】

刑法令和2年第2問肢1を検討することになりました。横領罪の成立時期を考えるにあたって、横領罪に未遂がないことがヒントになるようでした。では、一緒に考えていきましょう。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。

考えている

まあまあですかね。

スク東先生:なるほど、そうですか。寒い時期ですし体調管理は気を付けたいですね。では、早速、前回の肢1の続きいきましょう。

〔司法試験令和2第2問・予備試験令和2年8問〕

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。

(他の肢は省略)

スク東先生:前回は、横領罪の成立時期を検討するにあたって、未遂がないことを確認しました。

(横領)
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

東花子さん

はい。確か、窃盗などと違って、誘惑にかられるので刑が軽めになっていたはずです。

スク東先生:いいですね。ここから、本日の議論なりますが、何をもって「横領した」というのかを改めて考えてみたいですね。

東花子さん

うーん、これが、危険犯ということなんでしょうか。

スク東先生:そうですね。危険が発生した時点で、構成要件的結果が発生したと説明します。横領罪は、未遂がないのですが、それだと、刑法の目的との関係で処罰の隙間が発生してしまいます。社会相当性を逸脱する行為から、法益侵害及びその危険性の発生を抑える必要がありますからね。

考えている

なるほど、ただ条文には、「横領した」と結果の発生が必要な感じで記載がある。

スク東先生:そうですね。そこで、条文の文言と処罰の必要性をつじつま合わせる形で、「危険」の発生も含めて、構成要件的結果が発生したとするわけです。イメージとしては、重い犯罪の場合、例えば殺人だと侵害した時点で殺人既遂、危険性の時点を殺人未遂とする。

東花子さん

そうですね。わかります。

スク東先生:はい、そして横領罪の場合、刑が軽いので、殺人の例のように既遂と未遂をわざわざ構成要件で分けないで、1つで処罰するイメージだとすっきりするように思います。

花子さん

なるほど。

スク東先生:そうそう。それを危険犯とかいったりする。軽い犯罪の場合、これで概ね整理できると思います。その上で改めて、横領の成立時期を考えたいですね。要は、危険という結果が発生したのがいつなのかという話です。

東花子さん

ふーん、わかりました。

スク東先生:はい、これを踏まえると、どの時点で横領罪を成立させるべきか考察できるはずです。

考えている

えっと、実行の着手の時期と同じ方向性で整理すればよいのでしょうか。

スク東先生:そうですね。現実的危険が発生すれば、危険という結果が発生したと評価できますから。

花子さん

なるほど、わかりました。それで、実行の着手が認めれる時期って、どうやって判断するんでしたっけ。

スク東先生:うーん、いろいろ疑問を整理することは大事ですね。わかりました。その点に関しては、次回確認していきましょう。それでは、今日も時間となりましたので終わりにします。この続きは、また明日お楽しみに。

カテゴリー: 刑法 | コメントをどうぞ