民法・司法試験令和4年第6問肢イを考えてみよう

【前回のあらすじ】

今日から,民法司法令和4年6問肢アを検討しました。
次は,肢イです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。少し暖かくなってきましたね。

スク東先生:そうですね。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和4年6問肢イです。

「イ.甲土地を所有するAが死亡して子B及びCが相続し,BとCの遺産分割協議により甲土地はBの単独所有とされた。その後,Cが,甲土地につきCの単独所有とする登記をした上で,これをDに売却したときは,Bは,Dに対し,甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。」

正解はどうでしょう。

正しいですね。

スク東先生:なんででしょう。

条文(899条2 第1項)です。判例(最判昭46.1.26)もあったようです。

スク東先生:なるほど,確認しましょう。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2
1.相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2.(略)

この条文によれば,Bは,Dに対し,甲土地の単独所有権の取得を対抗するには,登記がいることになります。

スク東先生:そうですね。B単独所有ということは,相続分を超える部分をDに対して主張することになりますからね。結論はいいのですが・・・。

なるほど,今回はしっかり意味を取るということですね。

スク東先生:はい,第899条の2 が2018年改正で新設されましたが,それ以前は,遺産分割後の第三者ということで,177条で処理していました。人によってはこちらの方が馴染みがあるかもしれません。

ふーん,そうなんだ。まあ,結局,相続関係で持分以上の権利を第三者に主張するときは登記がいるということになります。どう理解すればいいのでしょう。

スク東先生:そうですね。この場合は特に遺産分割によりBは単独で権利を取得してます。法的効果は遡及効になりますが(909条),BはCの持分を自らに移転することを怠ったといえるでしょう。

確かに,Bは,遺産分割により権利を取得しているので,Cの持分を移転できますね。

スク東先生:はい,そのようなBと,Cからの持分を譲り受けたDとの法律関係になります。利益状況からすると,Cの持分に対して,BとDは競争関係と考えられますね。

なるほど,その状況を見て,177条で処理していたわけですね。

スク東先生:そうですね。自由競争(二重譲渡)の関係を,調整するのが177条ですからね。ただ,第899条の2は,Cを起点として,BとDを177条で処理する理屈がわかりにくかったので作られました。

ふーん,確かに,BとDがCを起点として対抗関係だとするには,Cに一度でも権利がないといけないですからね。遺産分割の効果は遡及効ですので,Cに権利があったという説明が難しくなります。

スク東先生:そういうことです。まあ,いろいろ難しくいってしまいましたが,要は,利益状況を考えて,シンプルになる条文が手当されたと整理すればいいと思います。

なるほど,わかりました。

スク東先生:はい,こんな感じで大丈夫だと思います。それでは,ちょうどキリがいいので,この辺りで終わりしましょう。この続きは,また来週お楽しみに。



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