【前回のあらすじ】
前回から,刑法司法令和4年13問(予備試験令和4年第11問)肢エを検討しました。
その際に,何をもって「偽造」とするか,法益から導くことを確認しました。
前提が確認できたので,本題に入っていきましょう。
それでは、はじまりはじまり。
スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。
スク東先生:ふーん。気が付けば,少し肌寒くなってきましたね。体調管理には気をつけてましょう。
では早速,前回の続きいきましょう。
改めまして,刑法司法令和4年13問(予備試験令和4年第11問)肢エです。
「エ.指名手配され逃走中の甲は,本名を隠してA会社に正社員として就職しようと考え,同社に提出する目的で,履歴書用紙の氏名欄にBという架空の氏名を記載し,その横にBの姓を刻した印鑑を押印した上,真実と異なる生年月日,住所及び経歴を記載して履歴書を作成したが,その顔写真欄には甲自身の顔写真を貼付していた。この場合,甲には,有印私文書偽造罪が成立する。」
確か,前回,「偽造」は,作成者が名義を偽ることということを確認しました。
スク東先生:はい,私文書偽造罪の法益は,私文書に対する社会の信用ですが,対象が名義だからですね。法益から説明する解釈の基本もやりました。
今日は,それを前提に,本題(問題点)を整理していくわけですね。
スク東先生:そうそう,しっかり前回までポイント押さえてますね。それで,どのあたりが問題点かわかりました?
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スク東先生:なるほど,わかりました,それでは一緒に検討していきましょう。こういうときは,わかりやすいほうからいきたいです。本件,履歴書の作成者は誰ですか。
はい,甲です。実際,本件の履歴書を作っていますからね。これはわかりやすい。
スク東先生:いいですね。混乱しないようにするには,簡単な方から攻めるのが大事です。では,名義人は・・・。
Bですね。したがって,作成者と名義人の不一致がある。よって,偽造にあたる。また,その他の構成要件にも問題なく該当する。その結果,甲に私文書偽造罪が成立する。こんな感じでしょうか。
スク東先生:なるほど,確かに正解はでているのですが・・・。問題文の他の事情に触れてないので,若干もの足りないという印象です。
スク東先生:そうですよね。混乱してしまう気持ち,よーくわかります。ただ,こういうときも,シンプルに考えればですよ。結局,争点を作りたいのだから,偽造にあたらないって,なんとか言えないかと考えるわけです。
なるほど,履歴書の「顔写真欄には甲自身の顔写真を貼付」してあります。甲はきちんとA会社に入って仕事するので,雇用契約上の責任は負うつもりですね。
スク東先生:そうそう,契約上の最終的な帰属先が名義人だとする文書もありました(例,代理の冒用)。だから名義人も甲ではという考えもありうるんですよ。
甲にとって有利になることを考えれば争点がでますね。
スク東先生:はい,こんな感じで,問題点を出していただければと思います。
でも,正解から見ても判例は,名義人はBと考えていて甲とは考えていないですね。なぜだろう。
スク東先生:はい,その辺りの価値判断は,しっかり次回見ていきしょう。少しやりとりが長くなりましたからね。今回は,争点をどんな感じで出していくかを考えてみました。問題文の特殊事情を使って主張すると題意に沿った印象を与えられます。ぜひこの機会に意識しましょう。東さん,次回まで,よく考えておいてね。それでは,この続きはまた来週,お楽しみに。