刑法・司法試験令和4年第17問(予備試験令和4年第8問)肢3を考えてみよう

【前回のあらすじ】

刑法司法令和4年17問(予備試験令和4年第8問)肢2を検討しました。
次は,肢3です。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,ぼちぼちです。

スク東先生:そうですか。まあ,コツコツやるしかないですね。
それでは早速,問題の検討をいきましょう。

刑法司法令和4年17問(予備試験令和4年第8問)肢3です。

「3.甲は、業務として猟銃を用いた狩猟に従事していた際、Aを熊と誤認して発砲し、Aに傷害を負わせ、その直後にAを誤射したことに気付いたが、Aを殺害して逃走しようと決意し、殺意をもってAの胸部に向けて発砲し、Aを即死させた。甲には、業務上過失傷害罪と殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。」

正解はどうでしょう。

誤りです。

スク東先生:そうですね。なんでですか?

判例があります(最決昭53.3.22)。この判例によれば,業務上過失傷害罪と殺人罪は併合罪になります。

スク東先生:なるほど,ですね。ただ,それだと。

はい,例によって結論を押さえていないとダメとなります。

スク東先生:そうですね。もちろん,それができれば,よいとは思いますが・・・。なかなか,難しいですよね。ですので,やっぱり,意味を考えてみる必要があります。どうでしょう?

うーん。

スク東先生:なるほど,考え込んでしまいましたか。悩むと余計難しくなるので,ざっくり,整理したいです。事実を改めますと,「甲は、業務として猟銃を用いた狩猟に従事していた際、Aを熊と誤認して発砲し、Aに傷害を負わせ、その直後にAを誤射したことに気付いて」います。その後,「Aを殺害して逃走しようと決意し、殺意をもってAの胸部に向けて発砲し、Aを即死させ」てます。業務上過失傷害罪と殺人罪が,一連の流れで行われていますね。そのため,両罪を包括的に評価したいところですが・・・。

はい,しかし,判例は併合罪になっている。うーん,わからない。

スク東先生:そうですね。ただ,よく見ると,誤射をしたことを気づいた後に,「Aを殺害して逃走しようと決意し」てます。この時点で新たに規範を乗り越えているようにみえますよ。

なるほど,確かに,「誤射した行為」と「殺意をもって発砲した行為」の間に大きな隔たりがありそうです。そう考えると,包括的に評価するのは,まずいですね。

スク東先生:はい,だから,あくまで個別に評価して併合罪となります。。こんな感じで整理できれば,判例の結論も,うまく整理できると思います。あんまり突っ込んで,難しくしない方がいいでしょう。
それでは,今日も時間となりましたので,この辺りで終わりにします。この結論はまた,来週お楽しみに。

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