民法・司法試験令和3年第5問肢ウを検討しよう

【前回のあらすじ】

前回まで民法司法令和3年5問肢イを検討いたしました。
次は,肢ウです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

普通です。

スク東先生:そうですか,よかったです。とにかく,淡々とやっていきましょう。
それでは早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和3年5問肢ウです。

「ウ.裁判上の請求がされ,その後,その請求に係る訴訟が訴えの取下げによって終了したときは,その終了の時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない。」

正解はどうでしょう。

正しいです。

スク東先生:そうですね。なんでですか?

えっと,条文があります。

スク東先生:なるほど,確認してみましょう。

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第147条
1 次に掲げる事由がある場合には,その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては ,その終了の時から6か月を経過する)までの間は,時効は,完成しない。
① 裁判上の請求

スク東先生:147条1項かっこ書にあたります。だから,その終了の時から6か月を経過するまでの間は,時効は,完成しないとなりますね。

はい,そうなります。だた,例によって意味を考えていきたいです。

スク東先生:そうですね。どうせ,整理しないと忘れてしまいますからね。どうして,6か月間の完成猶予があるんでしょうか。

うーん。

スク東先生:ちょっと,考えてしましたね。こういうときは,具体的に利益状況をイメージするとよいでしょう。前提として,訴えの取下げがされるとどうなりますか。

訴訟係属が遡及的になくなります。

スク東先生:はい,その通りです。条文も載せておきましょう。

(訴えの取下げの効果)
民事訴訟法第262条
1.訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。

なるほど,そうすると,完成猶予の事由だった裁判上の請求(147条1項1号)も初めからなかったとなりそうです。しかし,実際,同条かっこ書がありますね。なぜだろう。

スク東先生:そうですね。余計わからなくなってきました。こういうときは,もう少し具体的に,考えてみましょうか。そもそも,わざわざ請求立てたのに,なんで訴えを取り下げたんでしょうかね。

えっ,あんまり,そんなこと考えないなぁ。

スク東先生:そうですよね。まあ,そんなに難しく考える必要はないですよ。訴えを取り下げたということは,請求はしたものの,その後の事情によって,裁判で争う必要がなくなったことが考えられます。

うーん,そうですが,どんな場合が考えれるだろう?

スク東先生:そうですね。もちろん,いろいろあるでしょうが,訴外で和解が成立したなどがあげられるでしょう。

確かに,それなら,わざわざ裁判で争う必要ないです。それで訴えの取下げか。

スク東先生:はい,ということで実際,訴えの取下げが行われました。その後,相手が約束を破ったらどうなるでしょう。

なるほど,それはいけませんが,可能性あります。

スク東先生:はい,そうしたら,また,再度,裁判上の請求を行う必要性があります。もう,なんとなく見えてきませんか。

そうか,そうなったときに時効が完成するのは,まずいわけだ・・・。

スク東先生:そうそう。だから,完成猶予の規定が置かれていると整理できるでしょう。

なるほど,よくわかりました。

スク東先生:まあ,これは一例ですが,こんな感じで,適用される場面を,少し想像して整理されると記憶に定着しやすいと思います。
ということで,今日はこの辺りで終わりしますね。それでは,この続きは,来週お楽しみに。

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