【前回のあらすじ】
「平成22年第13問肢4 共同親権者の1人が、他の共同親権者の監護下にある未成年の子を略取する行為については、未成年者略取罪は成立し得ない。」を検討することになりました。
結論は、誤ってますのはいいのですが、検討する上で、争点を意識したいという話になりました。
何か、争点をコツみたいのがあるのですかと話になって、一緒に考えてみることになりました。
では,はじまり,はじまり。
スク東先生:こんにちは、東さん。調子はどうですか。
スク東先生:そうですか。ボチボチなんて、頑張っているじゃないですか。結構、暑くて疲れている話よく聞きます。
とにかく、体調管理しながら、この暑い夏を乗り越えましょう。では、前回の問題を載せておきますね。
例 平成22年 第13問
4 共同親権者の1人が、他の共同親権者の監護下にある未成年の子を略取する行為については、未成年者略取罪は成立し得ない。
スク東先生:結局、裁判は、当事者の対立構造なので、争点を意識することが大事という話をしましたね。
スク東先生:いいじゃないですか、それでコツがあるという話をしていたのですが、考えてみましたか。
スク東先生:なるほど、そうでしたか。では、一緒に考えていきましょう。結局、このような問題の場合、法益侵害の「程度」が極めて小さいので、謙抑性の観点から犯罪が成立しないのではと、すればいいわけです。
スク東先生:いやー単純な話で、素直に条文読んだら構成要件に該当するわけです。しかし、今回の特殊事情において犯罪を成立させるのは、いきすぎなのでとするわけです。
(未成年者略取及び誘拐)
第224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
スク東先生:そういうことです。実際、この考え方は、可罰的違法性で採用されてます。例えば、「他人のティッシュ1枚、盗んだ」という場合、235条の構成要件に形式的には該当しますが、謙抑性から窃盗罪は成立しません。
スク東先生:はい、だから、この考え方を拝借して、本件でも使えないかという話がでるわけです。
スク東先生:そういうこと。まあ、この考え方は、いろいろなところで応用できるので、ぜひ使ってみましょう。ただ、実際は、原則通り犯罪を成立させてしまってます。これはどう理解しますか。
スク東先生:いいですね。法益侵害の「有無」からみれは「有」るいえるので犯罪が成立すると説明します。構成要件は、そもそも違法有責「類型」なので、細かい事情は拾わないんですよ。
スク東先生:はい実際、こういった事情は、法益侵害の「程度」ということで、違法性、責任の強弱に影響することになります。
そこで、犯罪の成否ではなくて、量刑の判断で考慮するわけですよ。
スク東先生:はい、この区別はとても重要なのでしっかり押さえましょう。ただ、例外として法益侵害の「程度」が極めて小さいと、「無」にほぼ等しいとして、構成要件レベルで考慮しうることも押さえましょう。
スク東先生:そういうことです。刑法の体系的理解をしっかり、この機会に抑えるようにしてください。
はい、それでは、今日も時間となりましたので終わりにします。この続きは、また来週お楽しみに。