刑法総論・共犯5

前回のあらすじ
短答過去問・司法28-19-4を使って、共犯の問題を検討しました。今回は共犯の最終回、引き続き司法試験28-19の問題を使って検討しましょう。では、はじまり、はじまり。
スク東先生:こんにちは、東さん。調子は、どうですか。

考えている

まあ、ぼちぼちです。

スク東先生:そうですか。まあ、焦っても仕方ありません。1つ1つ、大枠の理解からやっていきましょう。

東さん:はい。 スク東先生:では早速、司法試験短答式問題の平成28年第19問 選択肢5の検討に入ります。

司法28−19
5.暴力団組員乙は、対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し、誰にも犯行の決意を打ち明けることなく、小刀を持ってA方に向かったところ、乙の舎弟である甲は、乙の決意を察し、仮に乙がAから反撃されそうになった場合は、自分がAを殺害しようと考え、乙に何も告げることなく、拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが、乙は、玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には、乙の殺人罪の従犯が成立する。


スク東先生:結論は、どうでしょう。

東さん:間違っています。甲には、幇助罪は成立しません。


スク東先生:そうですね。では、なぜですか。乙は、誰にも犯行の決意を打ち明けていません。しかし、甲は、乙が殺害し損なった場合、自分が代わりにAを殺害しようと拳銃を持ってA方付近に隠れていました。この甲の行為を処罰しなくてもいいのでしょうか。

東花子さん

たしかに、処罰すべきようにも思われます。現に、甲は乙との連絡がなくとも、乙のA殺害の意図を察して、拳銃を持ってA方付近に隠れています。甲の待ち伏せ行為自体、危険性が高いようにも思われます。たまたま連絡がないからと、幇助が成立しないのも法益保護の簡単から見て問題とも思われます。



スク東先生:おお、その通り。論理を貫いたときの不都合性ですね。で、それにもかかわらず、幇助犯が成立しないのはなぜですか。



東さん:えーと……。ポイントは、幇助とはいかなる行為かを、考えるといい思います。



スク東先生:はい、その通り。それでは、幇助とは、いかなるものでしょう。


東さん:はい、正犯の犯罪行為を容易にする行為をいいます。犯罪行為を容易にするということから、物理的に容易にする場合と、精神的に犯行を容易にする場合の2つのケースが考えられます。

今回の場合、甲は乙がAに反撃されそうになった場合に備えて、拳銃を持ってA方付近に隠れていただけです。たしかに、拳銃自体は、所持しているだけでも人を殺傷する危険の高いものといえます。しかし、乙は、甲の存在すら気付いていません。物理的にも精神的にも乙のAに対する殺害行為を容易にする関係には、ありません。そうすると、乙の殺害行為との因果性を認めることはできません。したがって、甲の行為は、無関係な行為と評価できます。


スク東先生:そうですね。だから、甲は殺人罪の幇助には当たらない。銃刀法の問題は別途考えられるでしょうが、乙の殺人の実行行為を容易にしたことにはならない、したがって、幇助には当らないとなります。

甲には、悪い心はありますが、幇助行為がない。だから、この場合、幇助罪で罰することはできない、ということですね。


東さん:はい、そうです。


スク東先生:東さん、しっかり幇助を理解できてますね。この調子でいきましょう。では、そろそろ時間です。

来週は、皆さんが手薄になりがちな罪数論を検討します。お楽しみに。

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