前回のあらすじ
短答過去問・司法28−19を使って、共犯の問題を検討しました。今回も、引き続き共犯の問題を考えてみます。
では、はじまり、はじまり。
スク東先生:こんにちは、東さん。最近の調子は、どうですか。
スク東先生:そうですか。「緊急事態宣言の解除」で、世間が徐々に動きだましたね。延期された試験日程も無事発表されましたしね。まだ、安心はできませんが、勉強も気合いを入れていきましょう。
東さん:はい。
スク東先生:では早速、司法試験短答式問題の平成28年第19問 選択肢4の検討に入りましょう。
司法28−19
4 甲と乙は、A方に強盗に入ることを計画し、それぞれ包丁を持ってA方に侵入し、Aを包丁で脅かした上、室内を物色していたところ、家人B、Cに犯行を目撃され、甲はBに捕まったが、乙は逮捕を免れるためCの腕を包丁で切り付けて傷害を負わせた。甲には、住居侵入罪のほか強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
スク東先生:正しいですか。
東さん:正解です。
スク東先生:そうですね。では、なぜでしょうか。甲と乙は、A方への住居侵入と強盗の犯罪についての共謀は認められますが、家人への傷害については、共謀してませんよ。
話し合ってもいないことまで犯罪を成立させるのは、刑法の謙抑主義に反するのではないでしょうか。
スク東先生:その解き方は、まずいですね。頭の隅の記憶を思い起こして解いていても、すぐに忘れてしまいますよ。論理的に解かないと・・・。
そこで、もう一度。どうして共謀してもいないCさんへの傷害についてまで、共犯者の甲は罪責を追わなければならないのでしょう。前回までで共犯のポイントはどういう話をしていましたっけ。
スク東先生:その通り!!いいじゃないですか、そこから考えていきましょう。で、どうですか。
東さん:確か、因果的共犯論が、共犯の処罰根拠でした。この場合、甲は乙とA方に住居侵入し、強盗することを計画しています。強盗とは、暴行、脅迫行為で相手方の意思を制圧して財物を奪う犯罪です。当然、暴行の延長上で、被害者に傷害を負わせることは予想できます。
したがって、共犯者甲も正犯を通して「傷害」という法益侵害の結果を惹起しているので、強盗致傷罪が成立する……。
あっ、そうか。こんな風に解くんだ。
スク東先生:そうです。まさに、それが論理的思考です。難しく考えないことが大事です。細かな判例の知識を覚えることは、聞いていません。
どうです、大枠の理解が分かるとキチンと解けますでしょ。
スク東先生:その通りです。よかった。この調子でいきましょう。
そろそろ時間が来たので、終わります。
次回も、共犯論を検討します。お楽しみに。