こんにちは,スク東ブログへようこそ。解説編,好評公開中。
平成29年司法試験民法(解説編)
平成29年予備試験民法(解説編)
平成28年予備試験民法(解説編)
平成27年予備試験民法(解説編)
まずは,前回までのあらすじから
<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験30年7問(民法)肢「ア.相続の放棄は,相続の放棄をした債務者が債務の履行を長期間怠るなど背信性の程度が著しい場合に限り,詐害行為取消権の対象となる。」を検討することになりました。
結論は誤りだということになりましたが,なぜかという話になりました。
では,はじまり,はじまり。
こんにちは,東さん。早速はじめていきましょう。
条文も載せておきますね。
(詐害行為取消請求)
改正第424条
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
(詐害行為取消権)
現行第424条
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
結局,遺産分割と今回の相続放棄との違いを少し考慮するという話でした。
整理できましたか。
なるほど,それでは一緒に考えていきましょう。
いきなりポイントになってしまうのですが,遺産分割の場合と相続放棄の場合で,前提として想定されている利益状況が違うんですよ。
いやいや。ここは具体的に考えると分かるのですが,相続放棄がされる多くの場合,被相続人の財産がマイナスであることが想定されてます。
はい,そのための相続放棄です。ということは,一般的に相続放棄は詐害行為にならないんですよ。
ええ,ただ問題のケースは,相続財産が,たまたまプラスときの相続放棄はどうかという問題なんですよ。
正直,相続財産そのものを,債権者は把握して取引しているわけではありません。
そうすると,そこまでは債権者を保護しない。詐害行為に当たらないと説明すれば良いわけです。
そうですね。確かに,債権者は,積極財産として相続財産を責任財産とは見ていません。ただ,遺産協議を普通にやれば債務が返せるのに,それをしないというのは,詐害性がありそうです。
はい,やはり当事者目線になって利益状況を考えることが大事です。
ただ,覚えてもすぐに忘れてしまいますよ。ぜひ,気を付けましょう。
それでは,今日も時間となりましたので終わりにします。この続きは,また来週お楽しみに。