予備試験30年7問(民法)肢アを検討する 第3回 相続放棄と詐害行為取消権(民法424条2項)その2

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まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験30年7問(民法)肢「ア.相続の放棄は,相続の放棄をした債務者が債務の履行を長期間怠るなど背信性の程度が著しい場合に限り,詐害行為取消権の対象となる。」を検討することになりました。
結論は誤りだということになりましたが,なぜかという話になりました。
では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速はじめていきましょう。
条文も載せておきますね。

(詐害行為取消請求)
改正第424条
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

(詐害行為取消権)
現行第424条
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

結局,遺産分割と今回の相続放棄との違いを少し考慮するという話でした。
整理できましたか。

東花子さん

うーん,よく分かりませんでした。

なるほど,それでは一緒に考えていきましょう。
いきなりポイントになってしまうのですが,遺産分割の場合と相続放棄の場合で,前提として想定されている利益状況が違うんですよ。

東花子さん

えっ,どういうことですか。

いやいや。ここは具体的に考えると分かるのですが,相続放棄がされる多くの場合,被相続人の財産がマイナスであることが想定されてます。

東花子さん

なるほど,確かに負債を包括承継(896条)するのは,相続人が可哀そうですからね。

はい,そのための相続放棄です。ということは,一般的に相続放棄は詐害行為にならないんですよ。

東花子さん

そうか,放棄してもらった方が,債務者の責任財産が減らないので,債権者にとってもいいですからね。

ええ,ただ問題のケースは,相続財産が,たまたまプラスときの相続放棄はどうかという問題なんですよ。
正直,相続財産そのものを,債権者は把握して取引しているわけではありません。
そうすると,そこまでは債権者を保護しない。詐害行為に当たらないと説明すれば良いわけです。

考えている

なるほど,そう考えると遺産分割の時は,詐害行為になるというのも分かりますね。財産がプラスの時に行われるでしょうから。

そうですね。確かに,債権者は,積極財産として相続財産を責任財産とは見ていません。ただ,遺産協議を普通にやれば債務が返せるのに,それをしないというのは,詐害性がありそうです。

花子さん

そうか,その辺りをみて判例は,結論を持って行っているんですね。よく分かりました。

はい,やはり当事者目線になって利益状況を考えることが大事です。
ただ,覚えてもすぐに忘れてしまいますよ。ぜひ,気を付けましょう。
それでは,今日も時間となりましたので終わりにします。この続きは,また来週お楽しみに。



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