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平成29年予備試験民法(解説編)
平成28年予備試験民法(解説編)
平成27年予備試験民法(解説編)
まずは,前回までのあらすじから
<前回までのあらすじ>
花子さんは,司法試験29年12問(民法)肢「ア.抵当権者は,抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。」を検討することになりました。
どうやら本件では,抵当権者と第三者(目的債権の譲受人)の利害が対立しているようです。
そして,結果として,抵当権者を保護しておりますが,なぜでしょうか。
では,はじまり,はじまり。
こんにちは,東さん。早速始めて行きましょう。
一応,前提となる条文もあげておきましょう。
民法
(留置権等の規定の準用)
第372条
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。
(物上代位)
第304条
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
結局,判例は第三者より抵当権者を保護する解釈をしてます。
なぜでしょう。
なるほど良く勉強されてますが,それはどちらかというと許容性です。
もっと,抵当権者を保護する必要性を考えないといけません。
はい,そうです。今回,利益が対立しているので,どちらを勝たせても不利益は生じるわけです。
そうすると,どっちを勝たせた方が社会全体として不足が少なくなるかという視点で持ちたいところです。
その通りです。そうすると,この場合,抵当権者を保護する必要があるのですが分かりませんか?
なるほど,漠然としすぎましたね。
こういうときは,具体的にイメージを膨らませましょう。
抵当権者は,担保権者として優先弁済効を予め持っています。
そこで確認ですが,どういう時に担保の問題になりますか。
そうですよね。債権者(抵当権者)は,被担保債権の弁済がないと困るから確実に回収するために,抵当権の登記を設定して回収を担保しているわけです。
それなのに,目的債権の譲受人(第三者)を保護するとどうなりますか。
その通り。設定者は被担保債権を弁済してないんですよ。そして債権譲渡は,譲渡人(抵当権設定者)と譲受人(第三者)で自由にできてしまう。
抵当権者にとって,あずかり知らぬことで抵当権の行使が妨げられたら,社会的に安心して抵当権の制度を利用できますかね。
どうですか。この辺りが,抵当権者を保護する価値判断に結びついていると考えれます。
結局,いざという時に抵当権者を保護しないと,結果的に抵当権を設定しようとする者もお金を借りづらくなり困るわけです。
このように,利益衡量すると実際の事実が見えてきます。あとは,そこに結論を併せていけばいいんですよ。
そうですね。概ねそんなところでしょう。
ポイントは,分析すると感覚的に判例の結論が理解できます。
実際の事実を考慮して意味づけると,とても実感が持てますね。
はい,ですので,分析をすることを試みましょう。少し長くなりましたが,この位でいいでしょう。
では,今日も時間となりましたので終わりにします。
この続きは,また明日,お楽しみに。
ご連絡いただきありがとうございます。抵当権者の保護が不十分だと,制度の信用の問題となり,お金を借りづらくなってしまいます。
もちろん,債権譲渡の取引の安全も大事ですが,こちらの不利益の方が損失としては大きいと思われます。
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