こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから
<前回までのあらすじ>
花子さんは,司法試験29年5問(民法)肢「エ.代理権消滅後の表見代理は,相手方が代理人として行為をした者との間でその代理権の消滅前に取引をしたことがなかったときは成立しない。」を検討することになりました。
結論は,誤っていることが分かったのですが,問題の所在を確認することになりました。
では,はじまり,はじまり。
こんにちは,東さん。早速続きを行きましょう。条文も載せておきますね。
(代理権消滅後の表見代理)
民法第112条
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
昨日の質問で,なぜ「代理権の消滅前に取引したことがなかったとき」が問題点になるかわかりましたか。
そうですか。そういうときは,文理解釈を大事にする発想がいいですね。
いいですね。筋を通して考えることで,何か手がかりが見えてきます。
112条を素直に,本件の事例にあてはめるとどうなりますか。
はい,そうですね。ただ,本人から見ると,代理権をわざわざ消滅させているのに責任を負うことは,保護に欠け問題ではないでしょうか。
その通りです。したがって,112条で保護すべき第三者を,過去に取引があった場合に限定すべきではという疑問が生まれます。
はい,結局,本人と第三者のどちらを保護すべきかがポイントです。
ええ,ただ判例は,条文の文理の通り,「過去に取引があった場合に限定すべきではない」という判断をしています。
これは,なぜでしょう。
そうですね。具体的に見ると,直接の取引はなかったけど信頼しうる経緯をへて取引をした場合と,過去に取引をしたことはあるけど,かなり前である場合とで,決定的な違いをあるのかとの疑問が生じます。
はい,本人と第三者との利益衡量を事案によって柔軟に行う必要があります。
そう考えると,条文にないことを要求しなかった,判例の価値判断もしっくりきます。
そうですね。結局,過去に取引があった事実は,消滅につき第三者が善意だったのか,または過失がなかったのかという判断の資料とはなるでしょう。そこで,調整すれば良いと思います。
では,今日も時間となりましたので終わりにします。この続きは,また明日お楽しみに。