司法試験29年5問(民法)肢アを検討する 第5回 代理権の濫用 その4

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,司法試験29年5問(民法)肢「ア.代理人が自己又は第三者の利益を図るために契約をした場合において,それが代理人の権限内の行為であるときは,本人は,代理人の意図を知らなかったことについて相手方に過失があったとしても,その行為について責任を免れることができない。」を検討することになりました。
結局,93条ただし書類推適用で利益調整を図っていくのですが,その前提として93条の直接適用の場面を確認したのでした。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

こんにちは,スク東先生。

こんにちは,東さん。早速,初めて行きましょう。
例に,よって条文も一応載せておきます。

(心裡留保)
民法第93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

昨日からの復習ですが,心理留保は,内心と表示の不一致を表意者自身が知っていることを予定していました。

考えている

そうでした。また,不一致を表意者自身が知らないことは錯誤でしたね。

おお,良く理解できていていいですね。

花子さん

はい,しっかり復習しましたので・・・。

いいですね。そこを踏まえて,代理権濫用の場合に,どうなりますか。

東花子さん

まず,内心は法律効果を本人に帰属させる意思ですね。

その通りです。ポイント押さえてますね。では,表示は,どうですか。

東花子さん

はい,代理人として活動しているので,表示も本人に法律効果を帰属させるものだと思いました。

いいですね。ということは,結局,どういうことがいえますか。

東花子さん

内心と表示が一致しています。したがって,内心と表示の不一致を前提とする心裡留保は直接適用できないですね。

その通りです。しっかり,説明できてますね。
ただ,判例は93条ただし書類推適用をして利益の調整を図ってます。ここは,どう考えましょうか。

考えている

うーん,結局,内心と表示が不一致であることを表意者である代理人本人が知っているといえればいいんですね。

いいですね。考える方向性はあってます,どう説明しましょう。

東花子さん

はい,代理権の濫用の場合,内心に関しては,自己または第三者に経済的利益を帰属させる意思(いわゆる自己または第三者の計算),一方で表示は,本人に経済的利益を帰属させること(いわゆる本人の計算)が行われていると思いました。

そうですね。なんか,急に答えがスムーズになりましたね。結局,経済的利益の帰属において,内心と表示の不一致を表意者本人が知っていることになります。

東花子さん

ええ,そう考えると代理権濫用においても,93条の類推の基礎があると説明できますね。

その通りです。ここは,重要ですのでしっかり押さえたいです。このような形で,93条ただし書類推適用の結果,相手方が保護されるには,善意無過失が必要となります。

東花子さん

はい,したがって,肢のように「本人は,代理人の意図を知らなかったことについて相手方に過失があった」ときは,「その行為について責任を免れることができ」るので誤りとなりますね。

いいですね。これで確認できました。代理権濫用の場合,結論は何となく知っている方が多いのですが,いざ説明すると難しいと思います。
これを機会にしっかり,身に付けましょう。では,今日も時間となりましたので,終わりにします。
この続きは,また明日,お楽しみに。



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