予備試験29年9問(民法)肢イを検討する 第4回 511条と相殺の関係を考えよう【最大判昭45.6.24】 その2

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年9問(民法)肢「イ.債権者Aの債務者Bに対する甲債権がAの債権者Cに差し押さえられても,差押え前からBがAに対する乙債権を有していた場合,Bは,甲債権と乙債権の弁済期の先後を問わず,相殺適状にあれば,相殺をすることができる。」を検討することになりました。結論は,正しいことは分かったのですが,問題の所在を花子さんは,答えられませんでした。どうやら,「甲債権と乙債権の弁済期の先後を問わず」がポイントらしいのですが,しっかり考えることができましたしょうか。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,行きましょう。昨日の質問ですが,考えてこられましたか。

東花子さん

ええ,一応。

では,やっていきましょう。条文も,忘れないように載せておきますね。

(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
民法第511条
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。

結局,どういった時に問題がありそうですか。

考えている

甲債権より乙債権の弁済期が遅いときに問題なります。

いいですね。なぜ,そうなりますか。

東花子さん

うーん,なんだったけ。分かったつもりだったんですけどね。

そうですか。では,乙債権の弁済期が甲債権よりも遅い場合,通常,Bからは相殺がされますか。

東花子さん

あっ,思い出しました,相殺できません。双方の債権が弁済期になければ,そもそも相殺ができませんので(505条1項)。

いいですね。まあ,自働債権の弁済期が到来してれば,一般に相殺できます。結局,受働債権の期限の利益は,通常,債務者のためにありますね(136条1項)。

東花子さん

なるほど,期限の利益は,債務者の意思で原則に放棄できます(136条2項本文)。したがって,受働債権の期限の利益を放棄すれば,双方の債権の弁済期が到来したのと同視できますからね。

その通りです。では,自働債権(本件,乙債権)の弁済期が,受働債権(本件,甲債権)よりも遅い場合に,相殺がなされるのは,なにが前提でしょう。

花子さん

受働債権(本件,甲債権)について,債務を履行していないことでしょうか。

いいですね,その場合に,初めて双方の債権が弁済期に到来しますからね。ということは,どういう問題が生じますか。

東花子さん

一般に相殺が予定されていない時まで,債権者(本件であればB)を差押債権者(本件であればC)より保護すべきかという問題が生じますね。

その通りです。法的に保護すべき期待が債権者(本件であればB)にないようにも思えますからね。これで,問題の所在がでました。

東花子さん

はい,ただ,そのような問題が一見あるにも関わらず,判例は弁済期の先後は問わないとしてます,何か問題があるのでしょうか。

いいですね。問題の所在を押さえないと,その疑問は生じません。議論が深まってきましたが,どうでしょう。

東花子さん

うーん。ちょっと考えさせてもらっていいですか。

そうですね,考えてもらいましょう。では,今日は,ここまでします。この続きはまた明日お楽しみに。



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カテゴリー: 債権総論, 平成29年, 民法・商法・民事訴訟法 パーマリンク

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