予備試験29年5問(民法)肢オを検討する 第9回 留置権と居住利益の関係を考えよう

こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから

<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年5問(民法)肢オを検討することになりました。では,はじまり,はじまり。

東花子さん

スク東先生,こんにちは。

こんにちは,東さん。早速,予備試験29年第5問【司法試験29年11問】(民法)肢「オ.甲建物の賃貸人Aが,賃借人Bに対して賃貸借契約の終了に基づき甲建物の明渡しを請求したのに対し,Bが賃貸借の期間中に支出した有益費の償還請求権に基づいて留置権を行使し,従前と同様の態様で甲建物に居住した場合,Bは,Aに対し,その居住による利得を返還する義務を負う。」を検討していきましょう。

この肢は,正しいですか,間違ってますか。

東花子さん

正しいですね。

そうですね。なぜでしょう。

考えている

判例にあるようです。(大判昭10.5.13)

なるほど,結論はあっているのですが,それだと,ただ知っているだけですね。

東花子さん

はい,そう思います。

分かっているなら大丈夫です。結局,どの辺りが,問題となりそうですか。
関係する条文を載せておきましょう。

(留置権の内容)
民法第295条
1. 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2.(略)

(不当利得の返還義務)
民法第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

東花子さん

うーん,Aには,留置権が成立しているので,甲建物を明渡さないことに法律上の原因があると思いました。

いいですね。あと,もう一つ関連する条文があるので,こちらも確認しましょう。

(留置権者による留置物の保管等)
民法第298条
1.(略)
2.留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
3.(略)

留置権者Aが,甲建物を使用することは,特段の事情がない限り,298条ただし書にあたります。
(大判昭10.5.13)

東花子さん

誰かが使わないと建物がダメになるからですね。なので,「その物の保存に必要な使用」となるのですね。

いいですね。そうすると,なおさら居住の利得についても,「法律上の原因」があるように思うのですが・・・。

東花子さん

確かにそうですね。うーん。

悩ましい時は,大枠から考えてみましょう。本件の留置権は,賃借人の有益費の償還請求権(608条2項)の支払いを担保するために行使してますね。

考えている

それは,そうです。

はい,そこで居住による利得について,法律上の原因を認めるとかえって当事者間の公平に反しませんか。

東花子さん

どういうことでしょう。

分かりやすい話,有益費の償還請求額と居住による利得に対価的な均衡がない場合,明らかに不当な結果になります。

東花子さん

なるほど,確かに,そうですね。

はい,したがって,居住による利得については,法律上の原因がないとして,返還を認めることが当事者間の公平になります。

東花子さん

そうか,よくわかりました。

はい,703条の趣旨は,当事者間の公平です。したがって,趣旨に添うように「法律上の原因」について解釈すれば,とりあえずは守れるでしょう。正直,ここは,いろいろ説明がありそうですが,論理を意識しましょう。

考えている

そうしないと,結局,暗記になってしまいますからね。

そういうことです。とにかく,理解に努めましょう。では,今日も時間となりましたので終わりします。この続きは,また明日,お楽しみに。



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