こんにちは,スク東ブログへようこそ。まずは,前回までのあらすじから
<前回までのあらすじ>
花子さんは,予備試験29年5問(民法)肢「ウ.AがBから甲建物を賃借していたが,Aの賃料不払によりその賃貸借契約が解除された後,明渡しの準備をしている間にAが甲建物について有益費を支出した場合,Aは,Bに対し,その費用の償還請求権を被担保債権とする留置権を行使して甲建物の明渡しを拒むことはできない。」を検討することになりました。
判例は,295条2項類推適用で結論の妥当性を図っているようなのですが,類推適用の際の視点について説明を受けました。
花子さんは,論理的に類推のプロセスが示せるでしょうか。では,はじまり,はじまり。
こんにちは,東さん。早速,続きをしていきましょう。結局,類推適用するためには,類推する条文の意味(趣旨)を特定する必要がありましたね。
いいですね。そこも踏まえて,295条2項の趣旨を考えてきてくださいというのが昨日までの話でした。忘れないように条文も載せておきます。
(留置権の内容)
民法第295条
1.他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2.前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
結局,なぜ,295条2項があるのでしょう。
そうですね。勝手に,不法に占有を初めて,物に関して生じた債権を持って明渡を拒めるのは,本権利者が害されます。
留置権(295条1項)を認める趣旨は,公平なので,そこから,2項の意味を持って来れば,とりあえずは守れますね。
その通りです。そこで,本件のAは,契約解除後に甲建物に有益費を支出してますね。
そうですね。なので,判例も295条2項を類推適用しています。
はい,これで概ね解答としては大丈夫なのですが,余裕があれば,もう少し視点を出してもよいかもしれませんね。
はい,類推適用をするということは,実質を考慮して,Bを保護するという構成になってます。しかし,形式を見るとAは害されますね。
その通りです。なので,簡単に類推を認めると,今度は,Aの自由が害される側面もでてきます。
類推解釈も,必要な限度で許容しているにすぎませんので。
なので,慎重に運用する感じを出したいです。結局,本件Aに本権利者Bを不当に解する自由はありません。
したがって,解釈適用により法律による制約を受けてしまうことも,やむをえないということなのでしょう。
まあ,この辺りは,バランスを示すと良いという意味で指摘しました。
では,今日も時間となりましたので終わりします。この続きは,また明日お楽しみに。