刑法の短答問題を論文的に解く~23-8肢3~

刑法は,短答と論文が非常に近い科目である。短答の事例問題を,論文的にまとめることで理解も進む。
今回は,23-8肢3を論文的に解いてみた。ぜひ,基礎力アップに活用ください。

甲は,乙が保険金をだまし取るのに協力する目的で,乙の右手の親指を包丁で切断した。親指の切断について乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,傷害罪の構成要件に該当せず,同罪は成立しないか。

1 甲の罪責
(1)構成要件該当性
 甲は,乙の右手の親指を包丁で切断している。したがって,甲は,人である乙の身体を傷害した者である。また,事実の認識もある以上故意(38条1項)もあるため,甲は傷害罪(204条)の構成要件に該当する。
(2)被害者である乙の承諾
 もっとも,親指の切断は,被害者である乙が,甲に予め承諾して行われている。
 そこで,被害者の承諾が,傷害罪の成否に影響を与えるか。明文上,明らかでなく問題となる。
 まず,傷害罪の構成要件に該当しないと解することはできない。傷害罪の保護法益は,生命の次に,重要な身体である。構成要件に該当しないとすることは,法益保護が図れないからである。
 一方で,傷害の成否に被害者の承諾が影響を与えないとすることも許容できない。同意殺人(202条)と刑の不均衡が生じるからである。
 そこで,傷害における被害者の承諾は,違法性阻却事由であることが適当である。
そして,違法性阻却事由として,有効になるためには,社会通念上相当な承諾が行われた場合に限るべきである。なぜなら,違法性とは,社会的相当性を逸脱した法益侵害を指す。そこで,承諾が,社会的相当な理由で行われて初めて,違法性が阻却されるからである。
 本件での乙の承諾は,傷害罪で考慮されるべき,被害者の承諾にあたらない。なぜなら,承諾の動機が,乙が保険金をだますという目的で行われており,動機が不法である。
したがって,社会的相当な理由での承諾とはいないからである。
2 結論
 乙の承諾は,違法性阻却事由としての被害者の承諾ではない。よって,甲に傷害罪の構成要件に該当し,同罪は成立する。

以上

論文の演習の時間がない人は,ぜひ,短答を論文的に解答して基礎力をつけてほしい。
最後に,暑い日が続きますが,お体を大事にして勉強頑張ってください。



応援ありがとうございます。

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